中国・上海『Bistro 321 Le Bec(ビストロ 321 ル・ベック)』フランス料理 ☆

中国・上海『ビストロ 321 ル・ベック(Bistro 321 Le Bec)』フランス料理

 

フランスの中でも“食の都”と称されるリヨンで2つ星を獲得し、次世代のホープとされながら、あっさりと上海に居を移したニコラ・ル・ベック氏による『Bistro 321 Le Bec(ビストロ 321 ル・ベック)』。
基本的に中国の食材と人材を使いながら、一からフランス料理文化を築き上げてきた店ですが、その本場の味に嫉妬しました。

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 食の都リヨンでの2つ星シェフの地位を捨て、上海に移住したニコラ・ル・ベック氏

私事で恐縮ですが、「そのうち移住します」と言い始めてから、かれこれ20年が経ちます。

この20年を通算すると年の4分の1くらいは日本を離れた生活をしているものの、実際には、移住計画は実現していません。

いわゆる「やるやる詐欺」ですね。よく言われる「やらない理由ばかりを探している」状態だったのかもしれません。

できる人はできるのでしょうが、なかなか腰をあげるのは大変なもの。

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上海の『Bistro 321 Le Bec(ビストロ 321 ル・ベック)』に向かうために、メトロ「交通大学」駅から歩く道すがら考えていたのは、こんなことでした。

この店のオーナーであるニコラ・ル・ベック氏のキャリアと辿ると、その思い切りのよい決断だけでも好感が持てます。

彼がさっそうとフランスのガストロノミー・シーンに登場したのが、ミレニアムの頃。

食の都とも呼ばれるフランス南東部のリヨンで、シェフを務めていた高級レストラン『Cour des Loges(クール・デ・ロジュ)』を2001年には一つ星に昇格させ、「その年最高のシェフ」にも選出されています。

その後、自らのレストラン『BEC(ベック)』をオープン。こちらも順調に評価と人気を高め、2つ星の店に。

多くの同業のシェフから、フランス料理の次の時代を支える一人と評されていたのですが、2012年にはあっさりとリヨンを離れてしまいます。

その向かった先が、上海だったのです。

普通に考えれば、思い切った決断だと思います。うじうじ動けない自分からすると、それだけでリスペクトです。

中国の食材で、上海の人材で、一から作り上げた本格派ビストロ

店は、1930年代に建てられた庭園付き一軒家。

今は改装され、左側の歩道に面した一部がビストロで、一軒家のメイン部分はレストラン格の『Villa Le Bec(ヴィラ・ル・ベック)』になっています。

今回は、カジュアルなビストロの方でディナーです。

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設えは、ビストロそのまま。租界時代の洋館が残っている上海は、このあたりの雰囲気の出し方はお手のものかもしれません。

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ビストロですので、基本はア・ラ・カルト。

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勧められたカキとウニからスタートします。

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カキもウニも、かなり大ぶり。これも中国産だとか。

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白ワインのグラスに、ネームタグが付いているところがポイント。

外灘(バンド)のフレンチ『Mr & Mrs Bund』でも同じ方法が使われていました。

 

勝手な想像ですが、フランス料理の文化をきちんと伝えたい気持ちの表れだと好意的に捉えています。

スタッフの方によれば、人も食材も中国のものを揃えるのが店のポリシーだと、ニコラ・シェフも常々口にしているとのこと。

そのためには、スタッフにも客にも、文化をできる限り伝えていく必要が出てくるはずですから。

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そんなフランス料理の真髄を象徴するのが、シャルキュトリーかもしれません。

瓶ごと出てきたので、どうしたらいいか少し戸惑いましたが、ザクッと好きなように楽しめばいいようです。

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フランスの家庭に出てくるようなスタイルを伝えたかったのだとか。

瓶ごと出して、シェアして楽しむスタイルでした。食べきれなかったので、そのままにしていると、「持ち帰ります?」とのこと。

ハイと答えると、瓶ごと袋に入れてくれました。デリカテッセンっぽい感じで悪い気はしません。

 

大胆さが本場感をもり立てるメインの肉料理

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メインは、力強い赤身肉。塩加減は、少し強めでしょうが、そこに本場の味を感じます。

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「ジャガイモはフランス人にはなくてはならないもの」なので、質を安定させるのは苦労があったようですが、しっとりとしたバターが口の中で溶けていきます。

それにしても、ここまで本場感満載のビストロ料理が食べられる上海に、少し嫉妬しました。

例えば、日本のフレンチのレベルの高さは言うまでもありませんが、どちらかと言えば、塩加減やソースなど、全体的に丸いんです。

それは、そもそもの日本人の好みがそうだったとも言えますし、客が高齢化しているのかもしれないと思うこともあります。

個人的にはどちらも好きなのですが、力強いフレンチが身近に少ないので、ときどき無性に食べたくなります。

この感覚に出会ったのは、数年前までの和歌山の『Hotel de Yoshino(オテル・ド・ヨシノ)』と香港の『Neighborhood(ネイバーフッド)』くらいでしょうか。

 

やっぱり神は細部に宿るんです

同じことかもしれませんが、感銘を受けたのは、難しい料理をうまくこなしているな、ということでした。

シンプルな料理だからこそ、ほんの数%のニュアンスの違いで陳腐になりかねないはずですが、そんな難しさをクリアしているところは、さすが名シェフということでしょうか。

基本的には中国の人と素材を使いながら、このクオリティをキープしているのは並大抵のことではないはずです。

これは監修やアドバイザーという立場ではなく、シェフ自身が移住して、店にいるということが大きいと思います。

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例えば、’10年代初頭にチャイナマネーに引き寄せられるようにオープンしたビッグネームの店も、明暗がわかれてきました。

クローズやリニューアルする店が出てきたわけですが、その敗因は、オペレーションにあることが多いように見えます。

フレンチ、イタリアン、スパニッシュなど欧州料理には慣れていない時期があったとしても、上海は、そもそも美味しいものがたくさんある地です。

地頭ならぬ地舌は高い土地と思っていいでしょう。

なので、満足いかないレベルの出店だと、いくら有名店でも「上海っ子の舌を舐めるな。出直してこい」なんていうレビューが、英字メディアに平気で乗っていたりします。名前だけでは通用しない実力の世界になっていることでしょう。

そんな中で、しっかり根を張り始めていることがうかがえたこの『ビストロ・ル・ベック』をみると、やはり神は細部に宿るのだなということを久々に実感できた夜でした。

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次は、隣にあるグランメゾン格の『VILLA LE BEC』に行かなくちゃ。

 

 

『Bistro 321 Le Bec(ビストロ 321 ル・ベック)』店舗情報

営業時間:<月〜木曜>18:00〜、<金〜日曜>ランチ 12:00〜、アフターヌーンティー 14:00〜、ディナー 19:00〜
定休日:無休

電話番号:+86 21 62 41 9100
住所:Xinhua Road Police Station, 321, Changning, Shanghai
オフィシャルHP(英文)はこちら

店の地図

 

 

 



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