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酒と魚介料理。日本人よりも、日本の食文化への情熱を感じさせるシェフとソムリエが展開する、香港の和食店『RONIN(ローニン)』。
銀座や麻布にあってもおかしくないクオリティが、現地のお洒落ピープルたちを引き付けていました。
平均予算:ディナー 10,000~15,000円
看板もない隠れ家、その扉を開けるとーー
香港で、違和感なく日本酒と刺身などを中心とした和食が堪能できるお店。
目の前の生酒と料理だけを見ていると、「あれ、ここどこだっけ?」と思うこともしばしば。
隣の席から聞こえる、広東語や英語に、「あ、そうだ、香港だった」と思いなおす始末です。
場所は、上環から少しあがったエリア。『大班樓/The Chairman(チェアマン)』のすぐ近くですが、看板さえない隠れ家です。
2016年にオープン、「アジアのベストレストラン50」2017では、すぐさまNo.45にランクインした注目店です。
・「酒サムライ」の称号を与えられたソムリエがセレクト、日本の店より日本らしいドリンクの数々
カウンターに座り、目の前を見渡すと、日本産のウィスキーなどが棚にずらり。
サントリーやニッカのスタンダードなボトルから「白州」や「響」、「山崎」、「富士山麓」や「知多」などの地域色の強いブランド、さらには秩父蒸留所の「イチローズ・モルト」まで、日本でもこれだけ満遍なく揃っている店は少ないだろうと思えるラインナップが並びます。
そして、右の冷蔵庫には名だたる銘日本酒がぎっしり。生酒もあるということからも、蔵元としっかりとしたコネクションがあることがうかがえます。
それもそのはずと言うべきか、この店の酒ソムリエのエリオット・フェイバー氏は、「酒サムライ」の称号を与えられるほど。
彼自身が、日本の蔵元で醸したオリジナル日本酒まであるのですから、その知見と熱意のほどがうかがえます。
・築地や福岡から空輸される朝獲れの魚介類をふんだんに使用
料理はアラカルトでもあるのですが、せっかくなので、おまかせで頼みます。
付き出しのかずのこから、本格的な和食。
そして、生牡蠣。ちょっと小ぶりな身で、庄内産の岩牡蠣だそうです。もずくの酸味と岩牡蠣の塩味がいい塩梅。
と、あまりに普通に美味しさを楽しんでしまいましたが、え、庄内産? 東京ではなかなか食べることのない逸品。
どうしてこんなところに?と率直に感じたのですが、聞けば、午前中のセリにかけられた魚介が、築地と福岡から空輸されるそう。なので、夜の営業しかできないんだとか。
食材まで日本産にこだわった真骨頂を、刺身でさらに感じます。ほぼ完璧。
海外で食べたものの中では、ここまで日本的な美味しさを堪能できた刺身は、ほかではないレベル。
そして、北海道産のウニ。
さりげなく散らした生海苔が、見た目にも味にもおしゃれです。あくまで日本料理の枠を逸脱しないレベルの創作性。
そして、かつおの叩き。
これもビネガーを使ったドレッシングに、ミョウガや水菜が、味にも食感にもうまく絡みます。
外国語でのやり取りが面倒な方は、代行予約が便利です▽
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・オーソドックスな和食と、あくまで日本料理の域を外れない程よい創作性の共存
「カラスミうどん」。これも美味しかったです。
シンプルですが、クリエイティブな部分も忘れないことに好感が持てます。
この絶妙なバランス感は相当なセンスだと思っていたのですが、聞けば、シェフは日本人ではないとのころ。
厨房を仕切るのは、マット・アバーゲル氏。ニューヨークにある三つ星のジャパニーズレストラン『MASA』で研鑽を重ねたシェフという経歴を聞いて半分納得がいきます。
なぜ半分かというと、『MASA』はどちらかと言えばジャパニーズ・フュージョンなので、この『RONIN』のほうが日本オリジナルに近づいているのです。これを外国人シェフがやっているとは!
日本酒サムライのフェイバー氏と同じく、ふつうの日本人より、日本食のことを知っているというか、愛情があるというか。
オーソドックスに穴子の天ぷら。
鰆の西京焼きもオーセンティックな方向性で。
ここまで2皿ほど、オーソドックスな和食が続きましたが、このから揚げは、微妙に変化球かも。
日本人からすれば、ですが。肉が鴨です。しっかり身の締まった肉質で、これはこれで非常に美味。
締めは、ミニうな丼で。
それにしても、驚きました。酒だけでなく、料理もここまで、きちんと“日本”だとは。周りの客さえ見なければ、銀座や麻布あたりの割烹で食べているのと、ほとんど変わりません。
いまや、本場フランスで日本人がフランス料理をやることに関して誰も異論を唱えないように、どこの国の人が和食をやってもいいとは思うのですが…。実際に国外で日本人ではない料理人の和食を食べると、「何か、違うなぁ」という経験ばかりだったのは、紛れもない事実で……。
頭ではわかっていても、なかなかそれを具現するものに出遭わなかったのが、この『RONIN(ローニン)』に行って、「これはアリだな」と胸を張って言えるようになりました。
熱意があれば、国籍を超えて文化を理解できる。それは清々しい体験でした。
『RONIN(ローニン)』店舗情報
営業時間:18:00-0:00 定休日:日曜
電話番号:+852 2547 5263
住所: 8 On Wo Lane, Ground floor, Sheung Wan
オフィシャルHP(英文)を見る
ドレスコードと店の雰囲気
ドレスコードは特にありません。コミュニケーションは英語か広東語が話せる方なら、まったく問題ないでしょう。日本人客も多いので、ある程度スタッフも慣れているようですが、日本語での細かな対応は難しそうです。
予約の仕方
予約は電話かオフィシャルHPから(英語)。あるいは、日本語での予約サービスも利用できます。
店の地図