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「アジアのベストレストラン50」でも常連のトップシェフ、トニー・ルー氏によるフラッグシップ『Fu 1015(福1015)』。
ソースに頼りすぎず、良質な食材のポテンシャルを引き出した料理は、現在の上海の姿とオーバーラップします。
国際的な評価では上海随一! 洗練された上海料理を味わえる『Fu 1015』
横綱相撲。食べている際に、ふと頭によぎったのはそんな言葉でした。
国際的な知名度では上海の中ではトップクラスのシェフの1人、盧懌明(Tony Lu)氏によるハイエンドな上海料理店『福1015』。基本的には直球勝負。
時折、フランス料理の影響からか、ナチュラルなシュート回転がかかり、懐に食い込んでくる――そんな強引な説得力で魅力な王道のレストランだと見受けました。
こう断言してしまうと、伝統的な中国料理に詳しい方なら異論を挟まれるかもしれませんが、現在の上海において“王道の中華”だということですね。
ちなみに、野球や相撲で例えるのは、オヤジくさいと笑われるのですが、今回はあえてそうしています。
いずれにしろ、子供は行っちゃダメな店でしょう。年齢じゃなく、それくらいの大人の遊びを包み込む懐の深いお子ちゃまでない限りは。
・趣向を変えた4店舗を経営する上海のトップシェフ
マンダリンオリエンタルのレストランなどで名を上げた盧シェフは現在、直営店として江蘇路周辺で4店舗を経営。
ハイエンドなこの『福1015』、伝統的な上海料理をアラカルトで提供する『福1088』、カジュアルラインの『福1039』、ベジタリアンレストランの『福和慧/Fu He Fui(Fu1088)』とタイプをずらして展開しています。
その中で、ここではフラッグシップとも言える『Fu 1015』を紹介します。「アジアのベストレストラン50」でも、2015年にはNo.16に選ばれた店。
看板さえ出ていないレストランなので、ストリートNo.を頼りに、店に赴きます。1015という住所が、そのまま店名になっていることが特徴です。
・1930年代に建てられた洋館を活かした店の佇まい
この立地にもセンスを感じます。江蘇路は、かつては租界で歴史地区にも指定されていますが、観光客がこぞって訪れるような場所ではない閑静なエリア。店は、フランス人銀行家が1930年に建てた洋館が使われています。
国際的に評価の高いシェフたちが、こぞって外灘(ワイタン、Bund)に出店するなか、やはり地元出身の矜持のようなものなのでしょうか。20世紀初頭に建てられた洋館がレストランの雰囲気を高めています。
エントランスを入ると、壁を飾る数々のアワードの賞状に目を奪われます。
室内の20世紀初頭のレトロ感もたまりません。
客席は、全館個室のみ。2名から受け付けてくれます。
メニューは、コースのみ。1,078中国元(約17,000円)~1,480中国元(約25,000円)で、その日によって微妙に内容が異なり、値段も異なるようです。
この日も、サービススタッフが3枚、微妙に違う英中表記のメニュー表を持ってきてくれました。2万円でおさえたかったので、1,078中国元のコースを頼みます。
・伝統的な料理を、コンテンポラリーなプレゼンテーションで表現した前菜
前菜「Assorted cold dishes」
まずは前菜の盛り合わせ「精美冷菜四選」。海川山のものなど異なった食材が使われた4品が出てきます。
「野菜百叶巻/Braised bean curd filled with wild vegitable(野菜の湯葉巻き)」。
「老上海薫魚/Deep-fried grass carp in sweet soy sauce(鯉のフライ)」。
「金絲桂花糯米藕/Sweet lotus root filled with glutinous rice(蓮の根、もち米詰め)」。
「金橘鵝肝醤/Foie gras paste with orange sauce(フォアグラのペースト、オレンジソース)」。
どれも美しいプレゼンテーション。
根本にはきちんと中華の調理法でつくられた料理ではあるのですが、コンテンポラリーな表現をさらりと提示しています。
味付けも素材のポテンシャルを活かした繊細なテイスト。このあたりの垢抜けたセンスが、やはり国際的な評価に繋がっているのでしょう。
湯「Soup」
続くスープは松茸。
松茸純野生竹笙/Double boiled matsutake soup wild bamboo pith(松茸のスープ)」。
これも、秋~冬の時期にかけてはよく出されるメニューですが、松茸のクオリティ抜群です。中国産とのことでしたが、日本産の高級食材にも引けを取らない薫りの深さ。そこにキニガサダケのシャキシャキ感が加わります。
何よりも印象深かったのがスープ自体。非常に丁寧に出汁を取っているのでしょう。まさに中国で食べたものの中では、一番透明感の高い静謐なものでした。これが『ロブション』で出てきても何の疑いもなく食べていたでしょう。
外国語で予約するのが面倒な方はこちらが便利です。
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・直球勝負の主菜(メイン)~ご飯もの
主菜「Main Cuisine」
ここからメインに入っていきます。
メニューには、3品書かれていたので、プリフィクス式に選ぶのかな?と思ったら、何のことはない全部出てきました。
最初は海鮮のメイン。
「辣醤焼明○(虫に下)伴雪茄鏝/Braised prawn with chill sauce served with fried bun」。
英語のメニューを見て、「海老」に「チリソース」…あ、「エビチリか」と思って出てきたのが、これでした。びっくり!
確かに「Prawn」なので、「shrimp」よりは大きい海老でしょうが、ここまでだとは思ってもみませんでした。
でも、食べてみると確かにエビチリです。ソースもそれほどチリが強くなくまろやかな口当たりです。
肉のメインは、「和牛のステーキ」。
「火焼雪花牛肉/Grilled wagyu rib eye with mushroom」。
日本産を使うこともあるようですが、この日は、オーストラリア産のA5ランクの和牛だそうです。素直に美味しいなと思うのは、日本人だからでしょうか。
ソースもXO醤ベースですが、くどくなく、すっきりと仕上げています。
メインに野菜だったので、どんなすごい野菜が出てくるかと思ったのですが、青菜とキノコの炒め物でした。
「肘令蔬菜拼○(舟に皿)/Sauted seasonal vegetables」。
あまりにソフィスティケートされたここまでの皿に何料理を食べているのかすっかり頭から抜け落ちてしまっていたのでしょう、中華だということ忘れていました。
中華のコースの場合、メイン料理の後に野菜が出てくる流れも多いことを忘れていました。
口直し的な皿の扱いではあるかもしれませんが、実はこれがすごかった。青菜はシャキシャキで、しっかりした薫りが出ています。キノコも松茸とは違ったコクというか。こういった皿にもまったく手が抜かれてないことが伺えます。
・〆のご飯は、アワビとトンポーローとトリュフとともに
主食「Rice」
最後の飯ものは土鍋ご飯。そそくさとスタッフが何かを準備していると思ったら、トリュフ削ってます!
アワビと東坡肉の組み合わせは、ほかのレストランでもよく見られますが、たまに見られるのですが、黒トリュフまで入れられると圧巻ですね。
「黒松露鮑魚紅焼肉燜飯/Steamed rice with abalone and pork, black truffle」。
ただ、トリュフごはんだけでも名物にしている店もあるくらいなのに、こんなに詰め込むとごちゃごちゃいないか?という気もしたのですが、口に入れてその疑問はすんなり胃の中に消えていきました。
もしろトリュフが脇役で、あわびなどの香りを引き立てていくイメージでした。
甜品「Dessert」
デザートはすっきり豆乳のアイスクリーム。
「豆乳油条/Soybean milk ice cream with Shanghainese fried twisted dough sticks」。
「エビチリ」のときとは別バージョンの揚げパンがついてきます。
前菜のプレゼンテーション以外、それほどひねりはなく、比較的高級食材で押してくるメニュー構成だったのですが、なんだか説得力を感じてしまいます。
それは、食材の良さに負っていて、それをストレートに出す方向が成功しているからではないでしょうか。
中華料理でも、ものによってはフランス料理以上にソースに頼る場合もあるのですが、そういったこってこての中華料理とは一線を画しています。
話は少し変わりますが、よく知らない人間が今の上海に行くと驚きます。私自身がそうでした。
その驚きとは、何らかのカルチャーショックを感じるのとはまったく逆で、カルチャーショックがないことです。
東京で暮らしたり、ニューヨークやロンドンに行ったりするのとほとんど同じ感覚で上海でも過ごせるんです。やはり上海は上海で、中国を象徴している都市というわけじゃないということなのですが、そんな上海の現在の姿を料理に落とし込んだら?
それは、この『Fu 1015』が表現しているようなものになるような気がしています。
『福1015/Fu 1015』店舗情報
営業時間:ランチ 11:00~14:00、ディナー 17:30~23:00
平均予算:18,000~30,000円
電話:+86 21 5237 9778
住所:上海市长宁区愚园路1015号
予約の仕方
予約は2名から。オフィシャルHPはないので、電話か、Chopeなどの予約サービスから中国語か英語で。
日本語で予約したい場合、予約代行サービスなどを利用する方法もおすすめです。
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