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【『LIKE』食レポ】ディナー(2019年10月)
遅ればせながら――。
2019年3月にオープンしているので、ついそんな言葉を書きたくなってしまうように半年遅れではありますが、ようやく白金台の『LIKE』を体験。
まだ見ぬアジア料理とでも言うべき、クリエイティビティは予想以上でした。
・メニューの基本はアラカルト
ランチもディナーもアラカルトが基本です。
ただ、原シェフいわく、「ポップアップなどで試したコースなどが結構しっくりきたとのこと」だったので、無理言って、おまかせで頼んでみました。
まずは「アラックラッシー」を試してみます。
西アジア特産の蒸留酒アラックを使ったラッシータイプのカクテルです。
今回は食前酒にしましたが、スパイシーな料理を頼むなら、それと合わせても抜群でしょう。
アミューズは、「プチシュー」。
中に入っているのはパルミジャーノとペッパー。
パルミジャーノだけなら、想像通りですが、ペッパーでオリエンタルなテイストに。
心地よく裏切られた感が、アミューズから楽しいです。
そして、なんと「白キムチ」。
「白キムチ」とほぼ同時に出してくれたのが「蝦夷鹿のパテ・ド・カンパーニュ」だったので、セットで食べると納得。
蝦夷鹿の滋味とキムチの酸味が良い取り合わせです。
温菜が来る頃に、ドリンクを「ディルジンカクテル」に。
ディルの風味が染み込んだクラフトジンは、オールマイティにどんな料理とでも合わせられるテイスト。
続く、冷菜は「水ナスと梅のサラダ」。
そして、「御豆腐と明太子」。
メインの魚は「蒸した金目鯛と中華粥」。
個人的にはこれがもっとも印象に残りました。
西洋料理・イノベーティブ系の店でもキンメをよく見かけるのですが、ほとんどが鱗焼きでしょうか。
でも、シャキ感は上のネギと生姜に譲り、蒸すことによりしっとりとしたテイストを出しつつ、中華粥とのマリアージュに徹している感じが慎ましいな、と。
肉のメインとのことだったので、オーガニックの赤に。グルナッシュですね。
そして、「豚の炭火焼 マッシュポテト ケールとスパイスのラー油」。
シグネチャーの1つとも言えるでしょうか、プレートとしてランチメニューにもなっています。
「豚の炭火焼」と「マッシュポテト」だけだったらフレンチのメニューでもおかしくありませんが、ソース代わりの「ケールとスパイスのラー油」で、なんともエキゾチックなテイストに。
デザートの「生姜のクリームブリュレ」も、いい意味での和洋折衷のように受け取れました。
・now here, nowhere
これみよがしな気取りはないのですが、それぞれにアイデアが詰まっている料理が印象的。
食べながら、いろいろ似たような料理を出す店はないかと想像を巡らせてみたのですが、唯一思い浮かんだのは、台北の『Logy』でしょうか。
タイプは全然違うのですが、スタンスとして、ということですね。
ルーツをないがしろにしているわけではないですが、そこに囚われすぎることなく、現在、あるいは未来の「アジアの料理」ってどんなものかを追求しているという意味で、似たスタンスなのかと思ってしまうわけです。
どこにもないものを目指しつつ、今ここでもしっかりと楽しめる――クリエイティブの理想形とも言えるそんなスタンスを、この『LIKE』にも感じたのです。
☆ ☆
というわけで、『LIKE』で食事をしていたときの個人的な脳内BGMは、ザ・ハイ・ラマズというアイルランドのバンドの名盤『Hawaii』。
https://youtu.be/yKOP0MBYhYM
ハワイになんて行ったことのない北国の若者たちが、ビーチボーイズに触発されてトロピカルなサウンドを目指したら、非常にハワイっぽさの核心をついてしまったという、ロマンティックな作品。
この、ほぼ想像力で核心を突くというのが重要で、そのほうが伝わることもあるんです。
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