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三軒茶屋の人気フランス料理店『愛と胃袋』が八ヶ岳山麓の北杜市に移転して、約1年半。
八ヶ岳周辺の生産者の食材を使い、ときには自ら狩猟し、「今ここにしかない」料理を提供している現在の『Terroir 愛と胃袋』。
その「テロワール」の楽しさを堪能してきました。
平均予算:ランチ 15,000~20,000円、ディナー 20,000~25,000円/「ゴ・エ・ミヨ 023」2トック、「Japan Times Destination Restaurants 2023」
八ヶ岳の麓で紡ぎ始めた、現在のテロワールのかたち
山梨に移転して正解だったんだろうな。
ランチコースを食べ終え、コーヒーを飲みながら、頭に浮かんでいたのは、こんなこと。
三軒茶屋にあった『愛と胃袋』自体、その当時から美味しいフレンチではありましたが、八ヶ岳の麓で食べてみて「こりゃ、かけがえのない店になる可能性があるかも」と感じたのです。
老若男女楽しめるフランス料理というコンセプトは変わらずですが、料理だけでなくレストランとしての存在意義がよりタイトになった印象を受けました。
もちろん、古民家を使った趣のある空間を演出したり、ゆったりとしたダイニングスペースを確保したりすることが、都心ではなかなか難しいことは言うまでもありません。
高原野菜の産地であった八ヶ岳周辺では、こだわりを持った生産者も増えてきていると聞きます。
八ヶ岳周辺には、牛や豚などの畜産農家もいますし、山に入ればジビエなどの狩猟肉も獲れます。
そういった環境の良さなどに気分が良くなって、同じものでも、食べる側がより美味しく感じているだけかもしれません。
けれども、それらも含めてレストランの良さなので、その瞬間に感じたことがすべて。
店の紹介にもこうありました。
八ヶ岳南麓の山里にある築170年の古民家をロケーションに、この土地・この時期・この仲間たち(生産者)がいるからこその「テロワール(フランス語で「その土地のあじわい」のような意味)」を大切にした、老若男女健障だれもが食事を楽しめるオーガニックフレンチレストラン
引用元:https://www.facebook.com/aitoibukuro/
ちょっと哲学的の話になってややこしいのですが、個あるいは個性とはなにか?という永遠のテーマがあります。
例えば、20世紀的な考え方をすれば、個性はある尺度の中で評価される絶対的なものだとされていました。
ただ、現在では、もっと相対的な関係性のなかで、浮かび上がってくるものだという考えが徐々に広まっています。
その意味では「この土地・この時期・この仲間たち(生産者)がいるからこそのテロワール」っていうのは、結構重要なことかもしれません。
食において「テロワール」と言うと、土地のことが真っ先に頭が浮かびますが、その土地に加えて、時や人のどれかが違えば、厳密には再現不可能なものになるわけです。
そんな掛け合わせによるライブ感が、料理においても個性でいいのじゃないかな?というのが、私の最近の気分だったりします。
子供向けのメニューも豊富なコース料理
場所は、八ヶ岳麓のかつての宿場町・長澤。長坂インターチェンジと清里のほぼ中間ぐらいで、清里ライン(141号線)を一本脇に入ったところにあります。
長澤宿の問屋だったという築170年の大きな古民家が、レストランとして使われています。
近い将来には、宿泊もできるオーベルジュになるそう。
メニューは、ランチコース3種(スタンダード・ショート・ヴェジタリアン)とディナーコース1種、離乳中期から12歳までを対象とした子供向けコースも年齢に合わせて4種。
今回は、5品のLunch Short ¥4,530(税込)で。
ドリンクには、ワインペアリングのコースもあります。
山梨に移転先を決めた理由には日本ワインへのこだわりもあったとウワサに聞いていたので、飲みたかったのですが、車を運転しなくてはならなかったので、ノンアルコールのペアリングで我慢。
呑めないのか、残念…と一瞬思ったのですが、出てきたドリンクを見て、思い直します。
最近ハマっているモクテル系のドリンクで、料理と合わせた味とタイミングで出てくるので、これはアリです。
ランチ・ショートコースの詳細紹介
12月初頭で、テーブルに置かれたメニューには「小雪:橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」と題されていました。
そのコースの内容を、駆け足ですが見ていきます。
アミューズ「阿久津長芋」
メニュー名は生産者の名前で、小淵沢の阿久津さん。
彼が育てた長芋のムースに、キャラメリゼしたオニオン、ジビエのジュレ、食用ほおずきを添えて。
オードブル「石毛野菜」
こちらもメニュー名は、生産者のお名前から。小淵沢の石毛さんです。
ビーツのソースもそうですが、真ん中にそびえている豚肉と鹿肉のリエットが利いています。
私がベジタリアンじゃないせいもあるでしょうが、野菜は、肉や魚の旨味が足されると、より美味しくなると思ってます。
「自家製パン」
毎朝、焼いているという自家製のパン。
三茶時代から定評がありましたが、さらに美味しくなっている気がします。
また、左下にある自家製のピーナツバターが、さりげなく逸品。こちらも石毛さんのピーナツから。
オリーブオイルでも美味しいし、このピーナツバターバターでも美味しいし、バクバク食べていたらパンが足りなくなり、お代わりしてしまいました。
スープ「明野金時」
この「明野」は地名。
日照時間日本一と言われる明野町で採れるさつまいもをポタージュに仕上げています。
甘みの強い素材に、ターメリックがいいスパイスになっています。
ちなみにこのスープ皿(?)は蓋を締めると球体状。表面の粗野な感じも、縄文文化の里・八ヶ岳っぽくて気に入りました。
偶然いい食材と出会うこともテロワールの醍醐味か
メイン「鹿のグリル」
本来のメニューでは、ニジマスか放牧豚からのセレクトだったのですが、明野町で獲れた鹿もあるとのことだったので、迷わず鹿肉のグリルで。
周辺のお店でもよく耳にしましたが、2016年に明野町で食肉加工場ができてから、状態のいいシカやイノシシが入手しやすくなっているとのこと。
通常出している部位は、モモやシンタマなどだそうですが、この日はタンもあったとか。そういった嬉しい偶然性も「テロワール」と言えるかもしれません。
皿は、この古民家にあった瓦を利用しているそうです。
デザート「ルースター放牧たまご ショコラ」
最後も、地場のたまごやりんごを使ったデセールで。
そして、食後のお茶で〆ます。
食べ終わったときに気づいたのですが、皿の上に無駄なものがまったく載っていないことが印象的でした。
上でも書いたピーナツバターだけでなく、付け合せ、皿に残ったスープやソースはパンにつけて「完食」したのは久しぶりかもしれません。
ちなみに、2019年の2~3月は「Japanese 愛と胃袋」と変名し、日本料理を提供する店として営業するそう。
このフレキシブルさも、いい感じです。
環境や状況に合わせて、自分たちのスタイルを変える。そこからどんな個性が出てくるのかを感じてみたいものです。
予約方法
電話かwebから。 web即時予約は、一休で受け付けています。
店の地図・アクセス
『Terroir 愛と胃袋』店舗情報
営業時間:LUNCH 11:30-14:00、DINNER 17:30-21:00
電話番号:0551-30-9199
住所:山梨県北杜市高根町長澤414
オフィシャルwebはこちら
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