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ホーチミンのストリートフードをクリエイティブに昇華。
ベトナム語で「EAT EAT」という意味を持つ『ănăn』が切り開く、新しいベトナム料理のかたちに感服しました。
平均予算:ディナー 5,000~7,000円/「アジアのベストレストラン50 202」No.40
コンテンポラリー・ベトナミーズの人気店。
ベトナムのグルメシーンも進んでいるものだと驚いたのが、この『アナン サイゴン』。
たとえば「アジアのベストレストン50」で、現在ランクインしている店がない東南アジアの国は、ラオスとカンボジア、ブルネイ、そしてこのベトナムです。
日本人の口に合うからということもあるでしょうが、ベトナム料理の美味しさはよく知られたところ。
けれども、先端的なフーディーたちを魅了するようなクリエイティブな料理はまだ出てきてないのかな?と勝手に想像していたのですが、ここのコース料理を食べてみたら、そんなことは単なる先入観にすぎないことがわかりました。
店があるのは、ホーチミンの中であるドンコイ通りから徒歩5分くらい、公園になっているグエンフエ通りから西側に2本奥に入った通り。
昔ながらの食料問屋やストリートフード店が軒を連ねるノスタルジックなオールドマーケットなのですが、ポチポチおしゃれな店もでき始めています。
5階建てのビルの屋上にあるルーフトップバーもおしゃれスポットとして人気ですが、「モダンベトナミーズのパイオニア」と称されるシェフ、ピーター・コン・フランクリン(Peter Cuong Franklin)氏の手による料理に興味がわきます。
・メニューは、4種のコースを中心に、アラカルトも可
アラカルトも可ですが、コース料理では「Chef’s Tasting Menu」(51USD≒5,500円)、「Beef 7 Way Tasting Menu」(38USD≒4,200円)、「Saigon Tasting Menu」(29USD≒3,300円)、「Vegitarian Tasting Menu」(29USD≒3,300円)の4つがリストオン。
それぞれ面白そうではあったのですが、ここはやはり一番自信を持って勧められた「Chef’s Tasting Menu」にしておきます。
まずは「ハノイ」と名のついたオリジナルカクテルで乾杯。
ジンベースのスッキリしたテイストですが、オレンジやライムなど南国を感じられるところも嬉しいです。
さて、料理が始まり、まずはアミューズ。
「うずら卵の燻製」の燻製で、いくらなどが載せられているところもおしゃれ。
このプレゼンテーションで、「なんちゃって」ではなく、きちんと最先端のテクニックを消化している店だとことがうかがえました。
2品めは、キャビアのお粥。国産キャビアで、ワインやコーヒーの産地としても知られるダラットで生産されているそう。
ゆるめのポーチドエッグは、メニューに「ONSEN TAMAGO」と書かれていました。それで通じるんだ?
蟹の身にいくら、ブンタンをハーブで味付けされた小さなサラダ。
ベトナム料理では一般的なせんべいに乗っています。
そして、次のメニューは、え、タコス? なぜタコス?
タコスとはいえ、具が海老とポークにたっぷりの野菜。ハーブやピーナッツソースとなると、かなりベトナムなテイストですね。
ベトナム風サンドイッチ「バインミー」とベトナム風お好み焼き「バインセオ」の間を取ったらタコスになったと勝手に解釈してみました。
このあたりで、第1パート終了といったところでしょうか。
メニューには、そのパートにオススメのペアリングワインが紹介されているのですが、次のメインには、フランス産コトー・ブルギニョンのピノ・ノワールとのこと。
素直に従います。
これは、まあまあといった感じ。
日本で飲むワインが美味しすぎるので、これだけは大目に見てあげたいところです。
・洗練とローカル感が同居する濃厚な皿に魅了されるコース後半
さて、後半と背筋を伸ばしたところで給されたのが「水牛カルパッチョ」。
おお!
ベトナムでは結構水牛の肉に出会うのですが、カルパッチョは初めて。
良い処理をしているのか、臭みは意外と少ないですが、独特のコクはあります。
フォアグラの揚げ春巻き。
ハーブとの相性もいい感じです。
東南アジアなどでは噛む嗜好品として知られる「キンマの葉(Betel Leaf)」で、ブリスケを、土鍋で蒸し焼きに。
ブリスケですが、粗目のソーセージにしたような感じで、その少し野暮ったい食感が、むしろいいアクセントになっているように思います。
そして、「フォーの脱構築」と第された一品。
出た、煙!
レンゲの中に、新たなかたちを得たフォーが乗っているのですが、これはぜひ自分の目で確かめてみてください。
最後は、スペシャルなフォー。
和牛、ビーフリブ、骨髄などの肉のベリエーションに加え、トリュフにうずら卵、麺もゆで麺と揚げ麺と、これでもかというほど具を入れています。
牛の骨髄なんて、ミラノで「オッソブーコ」を食べて以来。
洗練されているようで、かなり地元感も濃いコースの後半でした。
・デザートにも、趣向が凝らされています
ポーションも大きめだったので、「ふわぁ~、終わった」と気を抜きかけていたのですが、デザートに出てきた球体。
ライムでできたアイスクリームなのですが、外側の殻が固くて、どうやって食べればいいのか?
サービススタッフから「思いっきり、スプーンで割っちゃってください!」と教えられたのですが、そのパターンですか?
バンコクの『ガガン』以来かも。
メニュー名の「ブロークンライム」とはそういったことだったのですね。
最後の小菓子も「綿菓子(コットンキャンディー)」とキッチュでありながら、結構凝った仕立てになっています。
・国際的にもブレークするか
シェフのピーターさんは、香港でもベトナム料理店を経営。
また、積極的に旅に出て、料理の最新技術にも吸収にも余念がないタイプだということです。
だとすれば、このくらいのクリエイティビティは難しくないかもしれません。
ベトナムはいまだ社会主義国だとはいえ、情報規制は基本的にありませんし。
ただ、作れるシェフがいたとしても、それを食べたいと思う客がいなければレストランは成り立ちません。
欧米人が半分くらいとは言え、ちゃんとテーブルが埋まっていたことに、ホッとした気分です。
同じような食材の料理が続いたり、ポーションが大きめなので後半少し食べ疲れてくるなど重箱の隅をつつけばいろいろありますが、一つひとつの料理の密度の濃さは、じゅうぶんな食べ応え。
細かなディテールまでさらに洗練されていけば、これはインターナショナルでも注目される店になるかも。
そんなポテンシャルをひしひし感じた店でした。
『Anan Saigon(アナン サイゴン)』店舗情報
コース料金:29~51 USD(約3,300~5,100円)
営業時間:ディナー 17:00~0:00
定休日:月曜
電話番号:+84 90 479 29 20
住所:89 Tôn Thất Đạm, Bến Nghé, Ho Chi Minh City, Hồ Chí Minh
オフィシャルwebページはこちら
予約に関して
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