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イタリア北部や中部で研鑽を積み、スイスでシェフを務めた中本シェフが、京都で2007年にオープンした『ビーニ』。
イタリアンだけではなく、フレンチや和の技法を織り交ぜたイノベーティブにも近い端正なルックスの料理の数々――その奥に流れる剛健なヨーロッパのテイストが意外や郷愁をそそりました。
平均予算:ランチ 7,000~10,000円、ディナー 20,000~30,000円/「ミシュラン京都 2021」1つ星
端正なルックスと剛健な味が同居したヨーロッパの真髄
舌は記憶に忠実ということなのでしょう。
時折、思いもしなかったときに、舌を通して「あ、あの時の…」と、これまで体験した何かが蘇ってくることがあります。
私の場合、フレンチやイタリアン、スパニッシュというより、もっと大雑把に「ああ、ヨーロッパ…」という感覚なのですが、例えば、香港のフレンチ『Neighborhood(ネイバーフッド)』で、それをもっとも強烈に感じたことがあります。
日本では、東京・祖師ヶ谷大蔵のピエモンテ料理店『Ristorante Fiocchi(リストランテ フィオッキ)』で食べた「ズッパ」、阿佐ケ谷『ラ メゾン クルティーヌ(La Maison Courtine)』の「アッシュパルマンティエ」などから、ふとヨーロッパに滞在していた時の感覚が身体のなかに浮かび上がってきたことがあります。
前置きが長くなりましたが、最近、その「ヨーロッパ感」をもっとも強く感じたのが、京都の『ビーニ』だったという話です。
北イタリアから中欧のテロワールを味わえるレストラン
イタリアやスイスで腕を磨いたオーナーシェフの中本敬介が、京都で店を開いたのが2007年のこと。
2017年に現在の御所南に移転したそうで、地下鉄「丸太町駅」から徒歩1分の立地にある町家が現在のお店です。
そもそも、何人かのシェフの方から、「イタリアンなんだけど、それを超えた料理が特徴」というような勧められ方をしていたお店なので、イノベーティブ的な軽やかな方向性かな?と捉えていたのですが、プレゼンテーションはともかく、その根底にはしっかりとしたヨーロッパの味が息づいていたところが印象的でした。
ヨーロッパ修行の仕上げがスイスだったというシェフのキャリアも影響しているのかもしれません。
まあ、最近は、国で料理を捉えるのが面倒になっているので、その気分にもぴったりだったということもあります。
メニュー
基本はおまかせのコースです。
「ランチ」¥8,228〜、「ディナー」¥15,730〜ですが、ランチにディナーコースを食べられることもあるので、要問い合わせ。
というわけで、今回はランチにディナーコースを。
Weingut Lech「Simply Wow 200 United」
最初のワインは、オーストリアのWeingut Lech「およそ200種の白葡萄」。
名前の通り、200種のブドウが使われているとかで、それをやること自体、かなりマニアックなワイナリーのようです。
味は何と言えば良いのか、万華鏡のように、口を付けるたびに印象が変わっていくという面白い体験です。
ファリナータ サラミ
アミューズに、「コロナで行けないので、かえってイタリア熱が高まっている」ということで、北イタリアの屋台などで食べられるローカルフードから。
ひよこ豆の生地を使ったお菓子で、グラッパを混ぜ込んだサラミを挟んでいます。
この味で、さっそくヨーロッパにトリップです。
鮑 菜花
穴子 西洋葱
グリッシーニ
ポキッポキッと気持ちよく折れる、ちょうどいい太さ。
いつまでも食べてたい感じ。
Malat「Gelber Muskateller 2019」
もう一杯、白で、ちょっと深めにしていこうと、ドイツのMalat「ゲルバー・ムスカテラー 2019」。
オマール海老 ビーツ
いわゆる「五味」を表現した料理とのことで、海老の甘み、発酵させたビーツの旨味、自家製サワークリームの酸味、キャビアの塩味、ハーブの苦みが一皿に。
カリアータ
売っているものではなかなかないチーズの濃厚感が自家製ならでは。
桜鱒 ホワイトアスパラ
ソースは、ホワイトアスパラガスの茎とチーズを作る際の乳清から。
Vijin「Moody DOC Langhe Nebbiolo 2018」
肉のメインに合わせて、赤ワインに。
大好きな北イタリアのネッビオーロがグラスで出ていたので、そちらにしたら、シェフのヨーロッパでのスタートもピエモンテだったとか。
アミューズ以外、典型的なピエモンテ料理が出てきたわけではないですが、味からすればなんとなく納得。
大和榛原牛 筍
ソースにはモリーユ茸。
火の入れ方は、繊細ですね。筍を炭火で焼いてほぐれた皮で香り付けしているとか。
アニョロッティ
北イタリアのパスタ、アニョロッティ。あ、ここで、ピエモンテなんですね。
中のタネには、岩手のほろほろ鳥や大原の黒キャベツ。
これは、ちょっと和の雰囲気もあります。
雲丹
で、パスタ2品目で、千葉産のセモリナ粉で打った太平麺のタリアテッレ。
雲丹と大原の卵で。
そう言えば、最後にパスタなんですね。
そこは日本式とも言えますが、これだけ多皿だと、早い段階でパスタを食べてしまうと、後の料理がお腹に入らないかもと納得です。
酒粕のムース
京都の酒造でつくられた酒粕のムースが印象的。
柑橘タルト
せとか、レモン、ベルガモットと柑橘をつかったタルト。
食後の飲み物
ミニャルディーズ
最後の小菓子も北イタリア系。
ミネラルが導く記憶
ちなみに、冒頭に「ヨーロッパの味」と感じると書いたのは、やはり自分自身の体験によるのだと思います。
私の場合、1年ほど暮らした経験のあるのは、フランスでもイタリアでもなく、オーストリアからハンガリー、旧ユーゴエリアなのです。
当時は、とくにグルメな生活を送っていたわけではなく、良いレストランに行く機会もほとんどなかったのですが、やはり、その時に普段食べていたものの記憶が蘇ってくることがあるのはなぜか?
今まで考えたことがなかったのですが、マダムとの会話の中で理解できました。
「白ワインはオーストリア、ドイツなど中欧のワインが多いんですね」と訊いたとき、「バレました?」とチャーミングに笑いながら、「シェフがスイスなどで働いていたこともありますし、イタリアよりミネラルの多さが、料理に合うと思って」とおっしゃっていたんです。
それを聞いて、なるほどと気づいたのが、ワインも相まって、料理に詰まったミネラル感が「ああ、ヨーロッパだ」と思わせるんだ、と。
ピエモンテ料理がどうこうというレシピではなく、その根底に流れている隠れた中欧の味に反応していたということがわかり、長年のつかえが取れて店を後にしたのです。
ああ、すっきりした!
メニュー
【ランチ】
¥8,228〜
【ディナー】
¥15,730〜
*メニュー・料金はあくまで参考になります。季節や食材の入荷状況によって変わることを前提にご覧ください。
予約/お取り寄せについて
電話かwebから。 web即時予約は、ぐるなびで受け付けています。
テイクアウト・お取り寄せは、オフィシャルサイトで受け付けています。
店の地図・アクセス
烏丸線「丸太町駅」より徒歩2分。
『ビーニ(Bini)』店舗情報
平均予算:ランチ 7,000~10,000円、ディナー 20,000~30,000円
営業時間:ランチ12:00-13:00 (L.O.)、ディナー 18:00-23:00
定休日:月曜、火曜の昼、隔週日曜の夜
電話番号:075-203-6668
住所:京都市中京区三本木町445-1
オフィシャルHPはこちら 食べログの情報を見る
「ミシュラン京都」に掲載されたイタリアン一覧▽