Contents
タイ語で「生まれる、~を起こす」という意を持つ『GUUUT』。
伊那谷の素材がタイ料理と出逢って生まれる皿、醗酵食材との出会いが引き起こす化学反応のような料理を追求する稀有なレストランでした。
平均予算:ディナー 7,000~10,000円
食べログの情報を見る
店の特徴
南信に、野菜やハーブを自ら育て、様々な発酵手法を駆使しつつ、調味料なども全部手作りしている面白いタイ料理レストランができた。
甲信のシェフたちから、そんな噂を聞いたのは、2年前くらいでしょうか。
なぜ、こんなところでタイ料理、それも発酵に焦点を当てたタイ料理、しかもガストロノミック寄り?
という意外性に興味を持ち、「へえ、いつか行きたいなぁ」と思っているうちに、あれよあれよと人気店に。
長野のガストロノミーの特集が組まれれば必ず掲載され、ミシュランのない長野としては既にトップレストランの一角に。
さらに、コロナ禍もあったせいか、1日1組限定という営業形態が続いているので、3か月先まで予約可とはいえ、空き日がなかなかないという触れ込み。
おそるおそるDMしてみたら、ポツンと1日空きがあるとのお返事。
ただ、箕輪周辺に一緒に行ってくれる人なんていないし……と半ば諦めかけていたら、なんと関西の知人がその日に長野にいると知り。
そんな偶然に偶然が重なって、ようやく訪れることができました。
場所は、JR飯田線の「沢駅」から南に5分ほど歩いたところ。
いかにも古民家な店構え。
正確には、古民家の敷地内にある蔵です。
ただ、中に入ると、非常にセンス良くリノベートされた空間が広がっています。
メニューはコースのみで、6,600円と11,000円の2種類。
ボリュームはそれほど変わらず、食材などの質、皿数で値段が変わるそうです。
今回は6,600円のおまかせで、6皿のコースです。
アルコールペアリングもそれぞれに合わせて2種ありますが、5,500円のショートのほうをセレクト。
食で繋がるとタイと伊那谷
ドリンクメニューの確認をしている合間に、一番気になっていた「なぜ、こんなところで発酵タイ料理?」ということを聞いてみました。
以前は六本木で和食店を開いていた店主さん曰く、長野の昔からある発酵の文化とタイの食文化には共通点がとても多いとのことでした。
日本食のルーツと言っていいような食文化も、タイ料理ははらんでいると。
ほう、なるほど。
ことの前後に関して、私自身は確信はないのですが、照葉樹林文化の東端に日本、西端にタイが入っていることからも、食文化に共通点があることには、素直に納得できます。
コースの全貌
では、いきましょう。
0皿目:スナック
きゆうりをベースにしたカナッペ的な小品。
上には、ぼたこしよう、発酵させた米、タイハーブなど。
バンコクのレストランなどでは、パイナップルの上にタイの味噌を載せた一口サイズの「マーホー」から始まることも多いのですが、そのバリエーションでしょうか。
ペアリング1杯目:シードル
南信州・松川町にあるワイナリー、VinVie(ヴァンヴィ)のシードル。
1皿目:アミューズ
とうもろこし、すいか、きくらげのヤム。
2皿目:海老とハナビラタケのラープ
海老とハナビラタケ。
仕上げに、タイでは「若返りのハーブ」と呼ばれているブアボックを散らしています。
ペアリング2杯目:ロゼワイン
北海道・余市のワイナリー、ラン セッカのロゼ「早花咲月(さはなさづき)」。
ナイアガラにキャンベル アーリーを加えたフレッシュなロゼです。
3皿目:発酵豚肉の薬膳スープ
骨付き豚とヤマドリタケ(ポルチーニ)の薬膳スープ。
ニンニクやもち米、スパイスで発酵させた豚肉、きゆうりの塩漬けで奥行きのある味わいを醸し出しています。
ナツメも入っているところに、南方系中国料理なイメージで、タイの中国料理店でよく食べた味に近い印象です。
それも、ある意味タイ料理とも言えるかもしれません。
ペアリング3杯目:日本酒
滋賀・長浜の蔵元「冨田醸造」の七本鎗から「山廃純米 琥刻(ここく) 2014」。
さすが和食をやっていた方のセレクトです。
4皿目:タイ式オムレツ
酸味のある発酵ソーセージ「ネーム」が効いたタイ風オムレツ。
スイートチリソースは、一般的には砂糖で甘みを出しますが、ここでは甘酒を使って深みを出しているそう。
ペアリング3杯目:白ワイン
大町市のYamano-Vin-Seのシャルドネ。
発酵中のようなフレッシュさが特徴の白ですが、発酵が効いた料理とのコントラストが面白いペアリングです。
5皿目:白身魚の蒸し物
新潟の鯛の蒸し物。
レモングラスやライムでタイ料理佐しさを出すことも多い白身魚の蒸し物ですが、ここでは、幾重にも重なる野菜の旨みがスパイスに。
ペアリング4杯目:白ワイン
ふたたびVin Vieで、こちらは樽熟成が効いたシャルドネ「緒(いとぐち)」。
6皿目:ゲーン
タイ風カレーとでも言うべき「ゲーン」。
一般的には、鶏肉を使うことが多い料理ですが、箕輪町の経産牛の煮込んでいます。
添えられたもち米は自家栽培。
日本の一般的なもち米だと、旨み・甘みが強すぎて、料理に合わないから、自分で栽培しているそう。
口直し
スイカのジュース。タイティーと塩ライムを混ぜ込んでいます。
デザート
シャインマスカット、刻んだりんご、タロイモと煮たもち米などのスイーツ。
マンゴーともち米を使った「カオニャオ・マムアン」などが、タイ料理では知られたデザートですが、こういう素材の使い方もあるんだな、と。
ローカルガストロノミーの理想形の一つ
率直に言うなら、地味ぃにすごいコースだったと思います。
比較するのも何ですが、都心の人気店は、料理屋ではなく、食材屋になっているという話も、最近よく耳にします。
食材にこだわるのは悪いことではないですが、高級なブランド食材のオンパレード。
サッカーのプレミアリーグに譬えるなら、タレント揃いのチェルシーのようなラインナップです。
とはいえ、チェルシーが優勝できないように、人気はあっても、まとまりがなく、完成度が上がらない点は否めません。
もちろん、この『グート』も食材へのこだわりは並ではありません。
ただ、方向が全く違います。
もち米を自家栽培したところに象徴されるように、単体では輝いていなくても、料理として、きちっとした役割を与えられているところに興味を覚えました。
同じくサッカーのプレミアリーグに譬えるなら、クロップのリヴァプールのようなスタンス。
ここ数年、ローカルガストロノミーだとか、ディスティネーションレストランだとか、地方にもっと目を向けたい衝動に駆られていますが、後者のようなスタンスを実現するには、都会より恵まれているのかもしれません。
なぜこんなところにガストロノミックなタイ料理が?
その一つの答えが自分なりに解けたような気がします。
メニュー
【コース】
「おまかせ」6,600円
「おまかせ」11,000円
*メニュー・料金はあくまで参考になります。季節や食材の入荷状況によって変わることを前提にご覧ください。
予約方法
完全予約制。1日1組限定、2~6名のみ受付。
オフィシャルwebサイトから問い合わせができます。
店の地図・アクセス
JR飯田線「沢駅」から徒歩約5分。
『グート(GUUUT)』店舗情報
営業時間:ディナー 18:00~23:00
定休日:木曜
電話番号:090-1541-0215
住所:〒399-4601 長野県上伊那郡箕輪町中箕輪542-1 古民家 箕澤屋
オフィシャルwebはこちら 食べログの情報を見る