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佐渡島の南の玄関口・小木の漁港脇にできた小さなフランス料理店。
自ら野菜を栽培するほか、地元の食材を直接生産者から買い付け、構成されるコースが真骨頂です。
肩ひじを張りすぎず、シンプルな調理法を駆使しならがらも、紡ぎ出された料理に表れるそれら食材の調和に地方レストランの現在形を感じました。
平均予算:モーニング 1,000~2,000円、ディナー 5,000~7,000円
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店の特徴
2023年4月に小木の港の脇にオープンしたフランス料理店。
佐渡に長期滞在して、めぼしい料理店を集中的に回ったのが、2022年9月のこと。
そして2回目の今回が、2025年3月。
この『origine』に関しても、良い良い、行っておくべきという評判は聞いていたのですが、ちょうど合間になってしまっていて、オープンから少し年月が経っての初訪問となってしまいました。
○○
場所は、小木の漁港側の脇。
窓からは小木の海を眺めることができるロケーションにありながら、喧騒から少し離れた一軒家になります。
全7席のカウンター席のみで、佐渡の海や大自然を感じながら食事ができる点ことが特徴です。
食材のほとんどは佐渡内で店主の伊藤薫さんが自ら仕入れ、野菜やハーブは自家栽培もしているそう。
佐渡産をメインに自家栽培の食材などを、現代的かつ繊細な味付けで楽しめます。
季節の佐渡の食材の6皿のコース
ディナーは2種。
「魚と野菜の全4皿のコース」3,300円と「季節の佐渡の食材の6皿のコース」5.800円。
大きな違いは、メインに佐渡牛の皿などが付くかどうかです。
佐渡に住んで定期的に通うなら、4皿のコースを季節ごとに味わいたいなぁと考えつつ、ビジターなので、当然6皿のコースを選びます。
どちらにしても、都市の金銭感覚からすれば、高くはありません。
まずは、ノンアル「羽茂 無農薬 柚子」から、口のなかを
ちなみに、陳列された空のワインボトルを見ると、錚々たるラインナップです。
伊藤さんは佐渡に来る前、柏崎の酒屋さんの角打ちを任されていたことがあり、そこでワインを学び、その繋がりで今でも良いボトルが入手できているそう。
帰路の足があるなら、迷わず、ワインをボトルで注文するのがおすすめです。
ボタンエビ アマドコロ サトイモのジュレ
佐渡も海水温が高くなってきた影響で、海産物の旬の時期がズレてきているそうですが、甘エビは、3月下旬でもいい状態でした。
あまり知られていませんが、アマドコロは春の山菜。
若芽と地中の茎が食べられますが、ここでは若芽を使っています。
ほんのりとした甘さが好印象。
その2つの食材を、里芋の粘り気が優しく包み込んでいます。
春野菜
菜花を中心にスナップエンドウ、ニンジンなどいくつかを火入れを変えて。
じゃがいものジュレが下に敷かれています。
先の皿の里芋といい、このじゃがいもといい、ジュレをソース的に使っていますが、味を足すというより、それぞれの食材を繋げる役割のように受け止めました。
こういった調和の役割って、見過ごされがちな気がするんです。
その辺りは自ら食材を育て、自然と日々向き合っている感性ならではなのかもしれません。
小木無農薬レモンと生姜とスパイス
2杯目のノンアル。
先にワインを進めましたが、ドリンクが持つ風土の味わいなどを考えると、ノンアルのほうが、より鮮明にその店の特徴が伝わります。
魚料理
真鱈のグリル。
その下に春キャベツ、コンブ科に属する海藻のアラメ添えられ、旬の春菊のソースでまとめられます。
肉料理
佐渡牛の内もも。
餌でもある稲わらで燻して仕上げています。
赤ワインソースで、カラスザンショウの蜜から採れるハチミツがまろやかさを加えています
コシヒカリ
佐渡山脈のふもとで栽培されている無農薬のコシヒカリ。
佐渡も新潟の米どころの一つということもあり、フレンチでも地域食材を生かすのなら、当然使われるということでしょうか。
まずは、釜で炊いた白米のまま、一口。
魚沼あたりのコシヒカリと比べると、少しあっさりめで、個人的な好みはこちらです。
そして、岩海苔とオータムポエムの菜を加え、おじやに。
だしは、洋風ですね。
リゾットとは作り方は違いますが、フレンチのコースの中に入っていても、まったく違和感のない味です。
デセール
無農薬レモンのブランマンジェに、ソースは「かおり野」というブランドいちごから。
ブラマンジェには、高島農場のササニシキが練り込まれているそう。
最後はていねいに淹れたコーヒーで〆。
現代的な地方レストランの理想のあり方
伝聞なのでどのくらい正確かはわかりませんが、「ミシュランの星も狙いたい」と公言しているとのことだったので、野心家な料理人を想像していたのですが、どの料理もいたってシンプルな調理かつ非常に繊細。
キャリアを改めて調べてみても、フランス料理の基礎を学ぶものの、結婚式場や養護施設の厨房に立ったり、角打ちを任されたりと多彩。
いわゆる名店でキャリアを築くエリートとは一線を画しているところが、むしろ興味深く感じました。
佐渡島の風土や食材の豊かさに惚れ込み移住を決意したというように、この島の食材を生かし切った料理は、食べ手として食材の素性を深く探る楽しみを与えてくれるとも言えますが、この島の自然そのものを反映したようにも捉えられます。
そういった柔軟なスタンスは、単なるトップレストランの厨房だけではなく、様々な現場を体験してきたからこそ生まれるのかもしれません。
世界の先進的なシェフたちは、SDGsやエシカル消費などの流れを受け、「調和と循環」をテーマにするレストランも増えてきていますが、それを肩ひじはらずに、実践できているという稀有さ。
それは、地方レストランならでは醍醐味でしょう。
この個性が、今後どこまでテロワールとして昇華されていくか、興味の尽きないお店でした。
メニュー
【ディナーコース】
「魚と野菜の全4皿のコース」3300円
「佐渡牛と果物が入った全6皿のコース」5800円
*どちらも税込み
【モーニング】
セット:1,300円~
*メニュー・料金はあくまで参考になります。季節や食材の入荷状況によって変わることを前提にご覧ください。
予約方法
電話かwebから。 web即時予約は、食べログで受け付けています。
店の地図・アクセス
京王井の頭線「池ノ上駅」南口を出て、そのまま南へ徒歩約3分。
『origine(オリジヌ)』店舗情報
営業時間:モーニング 7:30〜11:00(LO.10:00)、ディナー 18:00〜22:00(LO.21:00)*前日12時までに要予約
定休日:火~木曜
電話番号:080-2115-9996
住所:新潟県佐渡市小木町1940-3 1階
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