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台湾のフレンチシーンを牽引してきたスターシェフの1人が、2015年にようやく築いた自らの城が『Toh-A’桌蔵』です。
禅をテーマに各界のエキスパートを招いて理想の空間に仕上げた蔵のような日本家屋。フランス料理と台湾料理をミックスした力強い料理。
繊細かつ大胆な、ベテランならではの醍醐味が詰まった、ありそうでなかった店でした。
平均予算:ランチ 7,000~10,000円、ディナー 15,000~20,000円/「La Liste 2020」No.675
モダンフレンチの名匠が手がけるニュー台湾キュイジーヌ
マカオで生まれ、香港で育ったオーナーシェフの布秋榮(William Bu)、通称:阿布(Abu)氏は、台北のモダンフレンチを牽引してきたシェフの1人と言えるでしょう。
香港のヒルトンホテルのフレンチレストランや、ときにドバイなどで腕をふるったと聞きますが、20年以上そのホームタウンと言えるのは台北だった人です。
そんな名うてのシェフが、ようやく自分の店を2015年10月にオープン。それが、この「Toh-A’桌藏」です。
禅スタイル実現のために各分野のエキスパートが集結
最寄り駅はMRTの文湖線「科技大樓站」。歩くと、10分くらいでしょうか。住宅街のなかに、突如モダンな入り口が見えてきます。
料理だけでなくデザイン的なセンスを持っているシェフだったのか、オープンにあたって、設計デザイナー、フラワーアレンジメント、アーティストと各分野のエキスパートを招聘。
エントランスを入ると、パッサージュには瓦を印象的に使ったデザイン。
中に入ると、シックなトーンの中で、要所要所に東洋的なモチーフを使った快適空間です。
ちなみに店名の「桌蔵」とはテーブルの意味。「Toh-A’」はテーブルのモデル名だとか。店名からもデザイン・コンシャスなスタンスがにじみ出ています。
全体のデザインの根本にあったコンセプトは、日本の禅だったと聞きます。
この建物も、築80年の日本建築。リフォームし、店内の隅々の設えに至るまでかなりセンス良くまとめています。
『楽埔/Leputing(ラプティン)』にしろ、『八拾捌茶輪番所』にしろ、旧統治時代の日本建築をうまく使っているところに、日本人としてはちょっと嬉しくなります。
コースはプリフィクス。メイン料理のセレクトで4~5種
テーブルに置かれたうちわがメニュー。裏は英語メニューになっています。
ランチコースは5皿で、1,500~1,980台湾ドル(約5,500~7,500円)。
メインの肉料理によって料金が替わります。この日は、魚、鴨のコンフィ、子羊のショルダー、和牛のシチュー、和牛のリブアイがありました。
ちなみに、ディナーコースは3,300台湾ドル(約12,000円)で、アラカルトもあるそうです。
ワインも、泡、白、赤とそれぞれ2-3種グラスワインがオンリスト。ロゼのスパークリングが置いてあったのも嬉しいところです。
イノベーティブ系で、どんな料理が出てくるかわからない場合、ロゼが一番合わせやすいと思います。
まずは、「自家製パン」。3種の違ったタイプのパンが出てきます。笹の葉をイメージした器にフランス産のバターを添えて。
冷前菜も3種。
「北海道のほたて」「台湾の小巻」「オーストラリアのあわび」と、石皿にもられています。
どれも素材の味を活かしたシンプルなテイストです。
小品ですが、素材の組み合わせや盛り付けなどにアイデアも詰まっていますし、絶妙な火の通りなど調理も適切。前菜から本気度が伝わります。
フランス料理と台湾料理の大胆なせめぎ合い
温前菜は「フォアグラと大根餅のサラダ添え」。
フランス式に仕込んだフォアグラの下には、台湾や香港のソウルフードの一つ大根餅。これが意外や、絶妙なマッチング。
続くスープは2種から選択。「ポルチーニと生ハムのチキンスープ」と「ロブスターのビスクとタンツー麺」。
ビスクを選んだのですが、これが面白い一品。
石焼きビスクで、鍋の周辺はグツグツ煮立っています。さらに、台南発祥のタンツー麺が入ります。濃厚なロブスターの出汁に、もちもちの麺。こんなラーメンがあったら週イチで通いたいです。
メニューを見た際は、スープがこの順番で出てくるのに少し違和感があったのですが、イタリアンで言えば、パスタみたいな役割をしっかり果たしています。
フランス料理と台湾料理のハイブリッドが続きました。
メインはオーセンティックなフレンチ寄り
先にも書いたように、メインは5種類ほどから選ぶスタイル。
魚、鴨、羊、牛など網羅しています。「鴨ののコンフィ」を選んだんですが、鴨自体は非常にオーセンティックな方向性。オーソドックスなフランス料理の偏差値も高いことが伺えます。
デザートは、少し遊びが入って現代的な方向性。
食後のドリンクは、台湾茶かコーヒーから選びますが、この後、お茶屋に行くことにしていたのでコーヒーを。
ただ、台湾茶は美味しいので、台北気分を味わいたいなら、そちらにすることをオススメします。
ベテランならではの独特なミクスチャー
印象に残ったのは、やはり「フォアグラと大根餅」と「ロブスターのビスクとタンツー麺」でしょうか。
フランス料理と台湾料理のどちらの要素も入っているのですが、そのやり方が独特でした。
フュージョンというと、お互いの料理法や素材を緻密に計算したり、さり気なく互いのテクニックを織り混ぜたりするものが多いと思いますが、主役級を真っ向からぶつけてくる料理は、滅多に経験したことがないものでした。
その美味しさは、コロンブスの卵的な驚き。かなり大胆なシェフですね。
インテリアからスタッフの意匠までをこだわる繊細さと、大胆なアイデアが同居した、台北では珍しいスタンスの店だと思います。
『Toh-A’桌蔵』店舗情報
平均予算:ランチ 2,000~2,500TWD(7,300~9,200円)、ディナー 3,500~4,500TWD(12,800~16,500円)
営業時間:12:00–15:00、18:00-22:30 定休日:無休
電話番号:+886 2 2377 0952
住所:台北市大安區和平東路76巷23弄9號
オフィシャルwebページ(中国語)はこちら
ドレスコードと店の雰囲気
カジュアルな店ですが、いわゆる「スマートカジュアル」が無難でしょう。食事の間も含めて、中国語が話せる方ならもちろん問題ありませんが、多くのスタッフの方は英語も大丈夫でした。片言の日本語は通じますが、細かなコミュニケーションは難しいと考えた方がいいでしょう。
予約の仕方
ネット予約サービスは見つからなかったので、電話かFacebookのメッセージで(中国語、英語)。
日本語で予約したい方は、代行サービスなどが便利です。
日本語可!『Toh-A’桌藏』をグルヤクで予約する
店の地図
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