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15世紀後半から東南アジア各地にやってきた中国系移民の子孫であるプラナカン。
中国のみならず、マレーを始めとする東南アジアの食文化を融合しながら長い歴史を刻むプラナカン料理を洗練させ、ミシュランの星を獲得するまで進化させた名店がこの『Candlenut(キャンドルナッツ)』です。
平均予算:ランチ 10,000~15,000円、ディナー 15,000~20,000円 /「ミシュランガイド シンガポール 2019」1つ星
プラナカン料理を世界に通じる洗練された料理に昇華
「プラナカン」とは、15世紀後半からマレーシアやシンガポールにやってきた、中国系移民の子孫のこと。別名「ババ・ニョニャ」とも呼ばれています。
民族的には原住民(マレー族)との融合が比較的進まなかったとされますが、民俗・文化的には土着の風習にある程度適応してきたと言われています。
そして、政治経済としては、かつての宗主国であったオランダやイギリスなどと、中国・マレーの人々の橋渡し役を務めてきました。
プラナカン料理とは、そういった民族の伝統的な料理ですが、マレーの伝統、中国の伝統をメインに、イギリスやオランダなどからの影響を混合して発展してきた料理と言えます。
・プラナカン料理で唯一のミシュラン星獲得店
そのプラナカン料理のなかで、ミシュランで唯一1つ星を獲得しているのが、『Candlenut(キャンドルナッツ)』です。
シェフのマルコム・リーさんも、この店で名を上げ、シンガポールの若きセレブ・シェフの旗頭のように言われているよう。
それ以前に、ホテルグループのComoの運営ということで、気になっていました。
ロンドンに本拠地を置くこのComoは、ロンドンやバンコクでタイ料理の『Nahm(ナーム)』を築きあげたグループ。
つまり、東南アジア料理の伝統を活かしながら、現代的にパフォーマンスする店作りには既に実績があるわけです。
このグループが、シンガポールのプラナカン料理をどう料理しているのか、楽しみでした。
・ランチもディナーも、人気メニューをバランス良く配したコースがオススメ
テーブルに着くとまず供されたせんべいを食べながら、メニューを眺めます。これが美味しくて、パクパク進みます。食べ過ぎると、料理がお腹に入らなくなるのですが。
この日頼んだランチの「おまかせコース」は、88SGD(約7,000円)+タックス。ディナーだと、118SGD(約9,500円)で品数が増えます。
アラカルトもあり。ドリンクは、ワイン、カクテル、ノンアルコールのモクテルが中心ですね。
口をさっぱりさせたかったので、レモングラスとジンジャーのモクテルから。
町中で飲むガツンとハーブが利いた味も美味しいのですが、ここではすっきりめ。こういうサイドメニューにも品の良さがにじみ出ています。
アミューズは、2つ。レンゲに入ったスパイシーな突き出しは。タコの小品。パイナップルや漬物のアチャラなどで味付けされています。
もう1つは羊のサテ。甘めの醤油味。
続いて、プラナカン料理の前菜として有名な「クエ・パイティー」。通常は、サクサクしたタルトの器なかに具が盛られたかたちで出てくることが多いですが、ここでは再構築というよりパーツ。
豚バラの煮込みや錦糸卵、海老にサンバルなどを乗せると、こんな感じです。
どう考えても小さなタルト器の中には収まり切らないのですが、ここの素材としても美味しく食べられる自信の表れだと解釈しました。
2クール目は、スープで「バクワン・ケピティン」。海老と鶏肉のつみれに鶏ガラスープで味わうこちらも、プラナカン料理では代表的なメニューです。
魚と肉をごっちゃにするのを避ける料理は多いですが、このちゃんぽんは個人的には嫌いじゃありません。山あっての海、海あっての山、というのを、すんなりミックスしています。
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・代表的なプラナカン料理をソフィスティケートさせたメイン
結局飲みたくなって、ワインを注文。オレンジワインを置いているところに、トレンドへの目配せが感じられます。
そうこうしているうちにメイン登場。茶碗サイズで5皿。ジャスミンライスが付きます。
ざっくり説明すると、最初は白身魚の生姜煮(Ikan Chuan Chuan)。続いて、東南アジア原産のシカクマメ(Wing Bean)を小海老であえたサラダ。一番下が小イカのサラダでサンボルあえ。
このあたりは典型的なプラナカン料理。けれども、洗練されたスタイルで仕上げています。
タイガー海老のココナツ&ターメリックのカレー。
これは、東南アジアなら、どこででも食べられるメニューと言ってもいいでしょう。
そして、牛のリブ肉をココナッツミルクと煮込んだ肉料理。インドネシアの西スマトラ州(州都パダン)の郷土料理がルーツです。
プラナカンの代表的な料理を中心に、程よく、東南アジアの料理を織り交ぜている構成ですね。とはいえ、違和感がまったくないところに、センスを感じさせます。
・奇をてらわずに、アジアの食文化をコンテンポラリーな料理に
デザートは、店員のオススメに従って、「Candlenut’s Classic Chendol Cream, Pandan Jelly, Gula Melaka」。
出てきて、ルックスに少し驚きましたが、上のゼリーに混ざっているのはパンダン(タコノキ)の実。葉は健康食として注目されていますが、実ははじめて。
少しヌルっとしていますが、プルプルでなんだかクセになりそうな食感。
率直な感想を言うと、『ナーム』ほどのインパクトはありませんでしたが、かなり面白いレストランでした。
いや、奇をてらわないスタイルに好感が持てたのですが、それはシェフのプラナカン料理への愛情と信頼がなせる業かもしれません。
シェフは、もともと西洋料理を志していたそうですが、プラナカン料理の作り手が減っていることに危機感を募らせ、転向したそう。
自分だからこそできるプラナカン料理を目指し、世界に通用するまでに磨き上げてきたわけです。
世界への近道は、実は足元にあったという好例でしょう。
『Candlenut(キャンドルナッツ)』店舗情報
平均予算:ランチ 120-150シンガポールドル、ディナー 150-250シンガポールドル
営業時間:ランチ 12:00-15:00、ディナー 18:00-22:00
定休日:無休
電話番号:+65 1800 304 2288
住所:17A Dempsey Rd, Singapore 249676
オフィシャルHP(英文)はこちら
予約に関して
電話あるいはオフィシャルwebから(英語・中国語)。
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