Contents
日本料理がベースのイノベーティブが、なぜかマレーシアで?
日本生まれで、アメリカ育ち、ふたたび日本で寿司修行をし、『エルブジ』でモラキュラーなセンスを習得。
異色の経歴を持つアメリカ人シェフが縦横無尽にセンスを奮う、コース料理を体験してきました。
クアラルンプールの街を見下ろす夜景も絶景です。
平均予算:ディナー 10,000~15,000円
クアラルンプールではいち早くオープンしたイノベーティブ・レストラン
「マレーシアって話題にならないね」。旅好きで食いしん坊の知り合いに会うと、こんなことが話題になるマレーシア。
どういうことかと言うと、 アジア・レベルで知られているハイ・エンドな店が少ないということです。
・マーレシアは、ファインダイニング不毛の地?
例えば「アジアのベストレストラン50」で、ASEAN加盟の10か国中、今まで一度もランクインしたレストランを出していない国は4カ国。ミャンマー、ラオス、ブルネイと、そして、このマレーシアなんです。
「La Liste」のTOP1000に入ったレストランも、マレーシアにはありません。
「え、なぜ?」。アジア各国の経済や文化を知っている方なら、たいていそう思うはずです。
何しろ、食に関しての地力はあります。
諸説あるものの、シンガポール名物として日本でも市民権を得てきた「クラブチリ」にしろ「チキンライス」にしろ、もともとはマレーシア料理だとする向きも多いのです。実際に、マレーシアでも、これらの料理は一般的です。
経済的にも、マレーシアが、ASEANの勝ち組として、活気を呈し続けていることことは、私が言うまでありません。
なのに、なぜ?と、もう一回言いたくなります。ならば、探しに行くか!
・小高い丘の上、さらに地上11階からの絶景
目星を付けていた店はありました。それはクアラルンプールの『Babe』というレストラン。
シンガポールの知り合いのシェフがSNSに投稿していたのを見て知ったのですが、日本のシェフの方々からも、たまに名前は上がっていました。
マンダリンオリエンタル東京の『Tapas Molecular Bar(タパスモラキュラーバー)』にいたことがあるシェフのようなので、直接知っている飲食業界の方が何人かいましたが、実際に行ったことがあるという方は見つからず。
ならば、自分で確かめてくるかと思ったわけです。
場所は、最近できたメトロの「Semantan」駅から、歩いて5分ほどのところにあるモダンなビル「Clearwarter」の11階。
ビルの入口には、コンテンポラリーアートがあり、ハイソなイメージが漂います。
1階奥にはオシャレなカジュアルレストランがあり、ファショナブルな若者たちが出入りしていました。2階には、広東料理の店。ここも悪くなさそうです。
11階に行くエレベーターはロックしてあったので、ビルの受付スタッフに声をかけて、上がっていきます。エレベーターを降りると、すぐ店。
クラブのようなバーカウンターの壁には、日本酒が並びます。
そう言えば、勢いで予約してしまいましたが、どんな料理の店か知らなかったので、検索してみると「寿司専門店」と出てきたことがありました。それならそれでもいいのですが。
早めの予約だったせいか、もっとも眺めの良い席を用意してくれていました。
スパークリングワインを傾けながら、その視線の先には、記念公園「トゥン アブドゥル ラザック メモリアル」の緑、そしてクアラルンプールの象徴であるKL
この夜景を見ることができただけで、満足です。
・ディナーのみ、コース料理のみの営業
メニューは、基本的にコースのみ。320マレーシアリンギット(約9,000円)~。
ワインと酒のコースもあります。3杯120リンギット(約3,500円)~。マレーシアでは、酒税の関係で、アルコールはちょっと高め。
アミューズは、トマトのドリンク。味付けが凝っています。
フランス産の牡蠣。軽く火を入れてあります。
「春の庭」と名付けられた一皿。マッシュルームとレモン風味のクリーム
アラスカ産のカニを、クリスピーなパン仕立てで。
一連の前菜は、『エル・ブジ』~『タパスモラキュラーバー』というシェフのキャリアが反映されていますね。
外国語での予約が面倒な方は、代行予約が便利です▽
日本語可!『ベイブ レストラン』をグルヤクで予約する
・和食の経験を活かしたコース中盤
「和牛刺し」。韓国産の昆布巻きを添えて。
サバの炊き込みご飯は、正式名は「アグリー・デリシャス(醜い美味しさ)」。
魚のメインは「銀鱈の照り焼き」。少し緩めのタレにし、マスタードとケールの種を合わせることで、独特な風合いを与えています。
ここまでの3皿は、かなり日本料理の影響が強い、というか、ベースはもろ日本料理です。
やはり、シェフが日本で働いていた影響でしょうか。そんな話をスタッフとしてみると、シェフのジェフ・ラムゼイさんは、そもそも日本生まれとのこと。
アメリカで育ち、タコス店や寿司店などで料理人としてのキャリアをスタート。本格的に寿司修行を積むために来日。
その後、料理の幅を広げようと、スペインへ渡り、『エルブジ』で研鑽を積み、再来日したあとは「マンダリンオリエンタル東京」の『タパスモラキュラーバー』を経て、この『ベイブ・レストラン』のシェフに就任したとのこと。
メインの肉は「ウズラのグリル」。下に敷かれている付け合せは、大麦です。
メインからの流れか、プレ・デザートは卵を模したチョコが鳥の巣の中に。
デザートは「ストロベリー・ショートケーキ」。
メニューを見た時に、「お、最後はストレート?」と思っていたのですが、やはり少しだけヒネりが利いてます。
メインは、ストロベリー汁が練り込まれたショートケーキですが、周りに、まずアーモンドのクッキーが巻かれ、バラの香りも添えられます。
・日本料理を出発点にしたイノベーティブ。レアなスタイルがクアラルンプールで
オフィシャルHPには、自らの店の料理を「日本料理をアクセントにしたタパス」と表現されていますが、日本人の私からすると、日本料理をイノベーティブに表現した料理のように感じました。
いろいろなところで書いていますが、『傅』など例外は別として、しっかりとした日本料理の基礎をスタートにイノベーティブな表現をするレストランが、日本には少ないような気がしています。
日本のイノベーティブ系は、ほとんどフレンチにしろイタリアンにしろノルディックにしろ欧州料理からスタートした方々がほとんど。
それはそれで良いのですが、バンコクの『ガガン』にしろ、マニラの『トーヨー』にしろ、バリ島の『ロカヴォール』にしろ、その土地だったり、自分自身だったりのルーツを21世紀流の表現でかたちにした料理の力強さを体験すると、こういったアプローチがもっとあっていいんじゃないかな?と感じてしまいます。
そして、この『ベイブ・レストラン』。探しいていた、ありそうでなかった日本料理の発展形を、なぜかクアラルンプールで見つけてしまったのです。なんてことだ?
そんな私の驚きは、国際的な評価とは無縁だとは思いますが、クアラルンプールの食の奥深さは、この『ベイブ・レストラン』からも滲み出ていると思います。
『Babe Restaurant(ベイブ・レストラン)』店舗情報
平均予算:ディナー 400~600リンギット(約10,000~15,000円)
営業時間:18:00〜23:30 定休日:月曜
電話番号:+60 3 2095 8599
住所:11th Floor, Work@Clearwater, Jalan Changkat Semantan, Damansara Heights, 50490 Kuala Lumpur
オフィシャルHP(英文)はこちら
予約の仕方
電話、オフィシャルweb(英語、マレー語)などで。
日本語での予約は、代行サービスなどが便利です。
日本語可!『ベイブ レストラン』をグルヤクで予約する
店の地図