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『福 1015』や『福1039』、『福 1088』などと同じく、上海のグルメシーンを牽引するスターシェフの1人、盧懌明(Tony Lu)氏が手がけるベジタリアン料理店『福和慧』。
多様な技で、まったく飽きさせない料理に、クリエイティブの可能性を感じました。
平均予算:ランチ 15,000~20,000円、ディナー 30,000円~/「ミシュラン上海 2019」1つ星、「「アジアのベストレストラン50 2020」No.20、「La Liste 2020」No.458
ベジタリアン料理を至極のイノベーティブに昇華する上海の名店
この『福和慧』は、近隣にある『福 1015』や『福1039』、『福 1088』などと同じく、上海のグルメシーンを牽引するスターシェフの1人、盧懌明(Tony Lu)氏が手がける店です。
コンセプトは素菜、つまりベジタリアン料理店です。
・中国文化圏に脈々と流れる、素菜の伝統
中国には脈々と流れる仏教の伝統がありますので、当然、精進料理も食べられてきました。
中国語圏では、ベジタリアン料理は「素菜」や「素食」と呼ばれますが、なかでも特徴的なのは、「倣葷菜(ファンフンツァイ)」と呼ばれるいわゆる“もどき”料理が主流となっていることです。
つまり、肉類や魚介類を使わずに、見た目も味も肉や魚そっくりにつくった料理が根付いてきたことでしょう。ですので、「素鲍鱼」とはアワビもどきのことで、「素肉」とは肉もどきのことです。
場所は、地下鉄の江蘇路駅から歩くと徒歩3-4分。『福 1015』を越えて少し行った建物の中にあります。
『福 1015』などと同じように、かつては租界地区にあたる江蘇路の古い邸宅をリフォームして使っています。
この店のオープンは2014年。
環境問題の悪化もあって、健康志向が強まるなか、上海の感度の高い人びと、とくに成功者の間では、こういった良質な素菜を味わえるレストランは求められていたのでしょう。
建物前に停まっていた外国車などからも、現地ではかなりハイソな客たちの御用達店なのだなということがうかがえます。
この日のランチは、早めに予約していたこともあって、個室を用意してくれていました。
先ほどの広間を広間を見てしまったので、こじんまりして落ち着く個室だなと感覚がおかしくなっていますが、普通に考えれば、優雅な個室ですね。
ダイニングルームもありますが、個室が中心です。
・全部で8品、3つの価格帯があるコース
メニューは、380元、680元、880元のおまかせコースのみで、どれも全部で8品。昼も夜も同じです。
担当してくれたスタッフの方とドリンクを相談していると、どうもワイン推しのようなので、素直に従います。
すっきりとしたシャブリらしいシャブリでした。
まずは、アミューズのスナック。
じゃがいも、えんどう豆のムースなど。
前菜は、高野豆腐系。
というように、コースの流れは、現代風なスタイルですね。
キヌガサタケのスープ。
こちらは、『Fu 1015』でも出てきました。
イタリアンで言えば、プリモピアット的な位置で、おこわが入ります。
ストレートに野菜を味わう、バーニャカウダ風の料理も。
中国語・英語で予約をするのが面倒な方は、こちらが便利です。
日本語可!『福和慧』をグルヤクで予約する
・上海の“もどき”料理の伝統が生かされたコース後半
中盤戦に折りかかったところで、なんとなくお茶と合わせたいと、鉄観音を注文。
透き通ったいいお茶でした。
さて、このあたりから、冒頭で説明したような、上海の“もどき”料理の伝統が生かされていきます。
出てきた瞬間、「ふーん、鶏肉ね」と思ってしまったのですが、そう言えば、ここはベジタリアンレストランです。
いわゆる肉もどきの「素肉」で、大豆でできていますが、鶏皮の部分の再現など秀逸。
米粉の皮に包んで、いただきます。
そして、アワビもどきの「素鲍鱼」。元はキノコだそうです。
そのままキノコでも、じゅうぶんに美味しいのですが、ここは趣向を楽しむに限ります。
最後は、ラビオリ。中は普通に卵黄でした。
植物由来のデザートや小菓子で、〆ます。
・クリエイティビティを発揮しやすいベジタリアン料理という分野
紛いなりにも「クリエイティブ」と呼ばれる職種のなかで仕事をしていると、ある程度の限定があったほうがクリエイティビティを発揮しやすいケースを何度も目の当たりにしてきました。
料理の分野にそんな経験を当てはめるなら、肉や魚を使わないという限定の中でパフォーマンスするベジタリアンは、創作性を発揮する意味でも面白いジャンルだなぁと思います。
宗教的な精進料理もありますが、この『Fu He Hui』は冒頭に書いたように、人びとの健康志向から求められて生まれたレストランでしょう。
なので、普段は、肉も食べれば魚も食べるような客(私もそうです)を相手に、退屈させず、満腹感も与えなければなりません。
そんな条件をクリアしていく、技の多様性に、出てきた言葉は、こうでした。
「恐れ入りました」。
食のサスティナビリティも考えなくちゃいけないこの時代。再現性の高い食品である野菜・植物だけで多様な料理を提供することこそが、イノベーティブの真髄。
とまで言ったら、大袈裟すぎるでしょうか?
『福和慧(Fu He Hui)』店舗情報
営業時間:11:00~14:00、18:00~23:00 定休日:無休 ※要予約
TEL:021-3980-9188
住所:長寧区愚園路1037号
予約の仕方
電話にて。
日本語でやり取りしたい場合は、予約代行サービスなどで。
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お店の地図
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