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平均予算:ランチ 15,000~20,000円、ディナー 15,000~20,000円 / 「ミシュランガイド台北 2020」2つ星
アジアの多様性をリスペクトする独創的な現代料理
東京・外苑前の『フロリレージュ』の姉妹店で、さっそくミシュラン1つ星を2019年の台北版で獲得している『ロジー』でランチ(2020年度版では、2つ星に昇格!)。
なんともカテゴライズが難しいお店ですが、現代アジア料理ってことなんでしょう。
後ほど説明しますが、私は「アジアン・ニュー・ミクスチャー」と勝手に呼んでいます。
台湾の良質な食材をフィーチャーしつつも、台湾料理に傾倒するわけではなく、フレンチ・イタリアン・日本料理のテクニックも使いつつも、そのどれでもなく、まだ誰も実現したことのないアジアを包括するような料理を模索しているような印象を受けました。
要するに、考えようによっては、かなり野心的ということです。
東京・外苑前の『フロリレージュ』の姉妹店ですが、スーシェフを務めていた田原諒悟さんが、単身台湾に乗り込み、食材を探し、スタッフを探すというところから、まさに一から作り上げていった店だそう。
そういったプロセスも影響しているのか、料理に対するフィロソフィーは、根底で『フロリレージュ』にも通じているのはたしかですが、アウトプットは全然違うところが面白いです。
・メニューは、ランチもディナーも、おまかせコースのみ
メニューは、「Tasting Menu」3,750 TWD(≒14,000円)の1コース。昼も夜も同じです。
ドリンクは、「Alcohol Pairing」と「Non-alcohol Pairing」があって、どちらも1,750 TWD(≒6,500円)です。
アルコールでも、ノンアルコールでも同じ料金というのが面白いなと、昼だったこともあり、あえてノンアルコール・ペアリングを頼んでみました。
台湾茶から素材を活かしたモクテルまで、多種多様。
ちゃんと出される皿との相性が考えられていることが頷ける、楽しい内容でした。
次は、夜にアルコールペアリングで堪能しようと心に決めたのですが、いつになったら再訪できるのか。
カウンター主体のインテリアが店の印象を形づくっていますが、それを活かしているのが、スタッフの方々が気持ち良いこと。
とりたててベタッとしたサービスではないのですが、程よく距離を取り、短いコンタクトでも心地よくなるようなイメージ。
聞くところによれば、個性重視で採用したとか。なるほどね。
海外一人メシでも心地よく過ごせました。
・緩急織り交ぜた10皿のコース
さて、本題の料理に。
冒頭にも書きましたが、シェフが台湾に渡り、まず現地の食材を丹念に探し回ったというのは、よく知られるところ。
ただ、それをやっているシェフは少なくはないわけで、探す行為自体がすごいのではなく、結果として良い食材を見つけ出してきたってことが重要なのでしょう。
とくに前半は、掛け合わせの妙もさることながら、「この食材、いいな」と思える料理が並んでいきます。
コースは、定期的に変わっていくことですし、こういった食材オリエンテッドな料理の場合、行った日によって多少メニューは入れ替わるでしょうから、個々の料理の説明は端折ります。
ほかの記事をチェックしてみると、「フレンチベースのアジア料理」みたいに紹介されていることが多かったのですが、個人的には、ほとんどフレンチの影は感じませんでした。
肉には、台湾ではなじみのある「苦茶油(クーチャーヨウ)」や「豆腐乳」が添えられることもあれば、タイ料理で使われる「カフィルライムの葉」のこともあります。
ほかにも、鰹節、昆布と日本的な出汁を使っていることもあれば、牛骨スープが使われた料理もあります。
そもそも、田原シェフ自身は、イタリアのピエモンテやカンパーニャなどで修業をした方だし。
日本のフレンチで腕を磨き、台湾に渡ったシェフなので、台湾人のお客さんからすれば、フレンチだろうがイタリアンだろうが、「日本」を感じたいわけで。
となってくると、もう地域名が多すぎで、どんな料理かわかんなくなってきますが。
普通はどこか一部分を切り出して、コンセプトを絞り込むのでしょうが、むしろそうしなかったことに私は好感が持てました。
「もう、どうでもいいや、日本と台湾なんだからアジアでいいんじゃない」と思ったかどうかは知りませんが、それらを全部引き受けたようなスタンスに、にんまりしていたわけです。
とはいえ、出てくるのは、写真の通り、繊細な料理です。
料理の分野では、こういういくつかの要素が混ざりあったものを、フュージョンと呼ぶのでしょうが、音楽好きの私としては、このネーミングがしっくりきません。
なぜなら、1970年代後半に生まれたフュージョンは、表面的な技術優先で、スピリッツを置き去りにしたようなものだったので、それぞれのルーツに対してのリスペクトが感じられないんですよね。
で、現在、音楽でも料理でも、食文化をクロスオーバーしていく表現は多くなってきていますが、その時代と比べると、使っている要素に対しての理解度の深さというか、因数分解と再構築の緻密さというか、表現の密度が段違いだと思うのです。
前の世代を批判したいということではなく、それが実現できるくらい、世界が、アジアが小さくなっているんだということですが。
そんなことを考えながら食べていたら、ふと「アジアン・ニュー・ミクスチャー」と言葉が浮かんできました。
はい、バレている方もいらっしゃるでしょうが、King Gnuの「トーキョー・ニュー・ミクスチャー」へのオマージュです。
・どこまで化けるか楽しみな存在
かなり説明があっちこっち行ってしまいましたが、単純化したキャッチフレーズではなく、丁寧な散文で語っていくような料理だと捉えていたわけです。
伝え手側の成長というより、後者の感覚の価値を共有できる受け手が、どれだけ増えていくかに、店の評価は比例して伸びていくんだろうなとも思いました。
実は、アジアの中で、食後感としてもっとも近いと思い浮かべていたレストランは、ソウルの『Mingles(ミングルス)』 でした。
全体的にはシンプルではあるのですが、そこに使われている一つひとつの要素を丁寧に読み込めば、非常に複雑なテクスチャーが浮かび上がってくるような部分で、今のところ、アジアで抜きんでているのは、この2つだな、と。
『Logy(ロジー)』店舗情報
営業時間:ランチ 12:00~15:00(L.O, 12:30)、ディナー 17:30~19:30(L.O. 17:30)、19:30~22:30(L.O. 19:30)
定休日:月火曜、水曜のランチ
電話番号:―
住所:6 Lane 109 Section 1 Anhe Road Da’an Táiběi
オフィシャルwebページはこちら
予約に関して
予約はオフィシャルwebから(中国語・英語)。
店の地図
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