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ミシュラン1つ星ではあるものの、なかなかその実態が掴みづらかった隠れた名店『ラビリンス』を発見。
シンガポール国産の食材に徹底的にこだわり、この国で暮らす人々が楽しんでいる食文化をストリートフードから海南鶏飯、チリクラブまでクリエイティブに昇華。
海外からシンガポールを訪れるイノベーティブ好きなフーディーには、オンリーワンのレストランかもしれません。
平均予算:ランチ 10,000~15,000円、ディナー 15,000~20,000円 / 「ミシュランガイド シンガポール 2018」1つ星
シンガポール国産食材を、卓越したセンスと技で安定したイノベーティブキュイジーヌに
アジアで、ルーツにリスペクトを払いながら、クリエイティブな料理を創造するイノベーティブ系のレストランは、かなり行き尽くしたかなと思いつつも、まだまだすごい店があるもんだ!
そんな驚きを久々に感じたのが、シンガポールのこの『ラビリンス』です。
ここ数年、「ミシュランガイド シンガポール」で1つ星を獲っているので、店の存在は知っていたのですが、あまり話題にのぼることもなかったので。今ひとつどんな店かがわからず。
後回しにしてましたが、その実態に気づくのが遅すぎですね。
これまで、シンガポールという国の成り立ちからも、なかなか食文化のアイデンティティが掴みづらく、だからこそ、イノベーティブなレストランも成立しづらいと思っていました。
シンガポール料理をイノべった方向性では、『ワイルドロケット』は頑張っているけど、ちょっとイタリアンに寄り過ぎなきらいがあるなとか、だったら、その筆頭は台中の「JLスタジオ」しかないと考えていましたが、方向性は若干違えども、この『ラビリンス』がありました。
何より輸入食材に頼るしかないと思われているシンガポールのなかで、地産地消にこだわり、アイデアと技でここまで持ってくるとは!と心地よい、驚きを感じた店です。
・コンサートホールの施設内にあるレストラン
店の場所は「Waterfront Promenade」内。10分弱歩きますが、メトロの「City Hall」駅にも地下道で直結しています。
「Waterfront Promenade」はコンサートホールを中心とした文化施設で、その2階。
エントランスは、おしゃれなバーのようになっていて、その奥がシックなダイニングになっているという2段構えの店のつくり。
待ち合わせなどでは、こちらで軽く一杯始めているなんて使い方もできます。
商業施設内の店内プランって結構難しく、高級店は世界観を変えるために壁ですべてを遮断しがちなのですが、開かれたスペースと閉じたスペースを上手く使い分けるつくりは、センスいいなと思いました。
・ディナーメニューは、おまかせコース1本のみ
メニューは、基本的に「Chef’s Tasting Menu」(178 SGD≒14,000円)の一本のみ。
ただ、8名以上の場合は、若干構成が変わるようですし、またコンサートホールのレストランらしく公演前に楽しめる「Pre Theatre Menu」(78 SGD、18時開始)もあります。
ランチには、「Lunch Menu」78 SGDと「Lunch Tasting Menu」128 SGDの2パターン。
席につくと、まず生産地マップに目がいきます。
そもそもシンガポールの地図って、中心部以外を意識することはあまりないので、こんな形をした国なんだ?というレベルから入っていくイメージです。
そして、サービススタッフから、この日使われる食材のプレゼンテーション。
実は現地でレストランをやっている日本人の方と一緒だったのですが、彼も「へ、シンガポールでこんなに食材つくってるの?」と驚いていたくらい。
そんなこんなで、まずはアミューズからコースのスタートです。
・アミューズはストリートフードの発展型:第1パート「CHEF’S FAVORITE STREET FOOD」
コース最初のパートは「シェフお気に入りのストリートフード」と題されています。
まずは、「味付けうずら」。
ホーカー(屋台)などで煮卵は一般的ですが、たしかに中国料理とも微妙に違って、シンガポールだなというテイストがあります。
これに合わせて出てくるのが、昆布茶。
かなり、酸っぱめ。
この2つで、一気に口の中は異国感に持ってかれます。
さらにアミューズ、第2弾として、立て続けに以下の3品が登場。
「HEARTLAND WAFFLE」local chicken liver pate & goji berry jam
鶏レバーのワッフル挟みです。
「HOMEMADE LAPCHEONG」barley, pickled bak choy, burnt rice “nori”
メインの食材は腸詰め「ラップチョン」。
焼きおこわのような感じで、創作寿司のようなイメージ。
「PULAU UBIN OYSTER」“takoyaki”, sambal & egg floss
ウビン島で獲れた牡蠣をたこ焼き風に。
これらの料理に関して。メニューは、ポストカードというか紙芝居仕立て。
外国人には、非常にわかりやすいです。
そもそも、この『ラビリンス』は、2016年のオープン当初からシンガポールのローカルフードをクリエイティブなアプローチで追求してきたレストラン。
一時期は「シンガポール人の24時間」をテーマにして、朝食から夜食までシンガポール人が食べるローカルフードを、イノベ―ティブなスタイルで一つのコースに詰め込むなどの試みもしていたそう。
その根底にあるコンセプトは変えず、2018年夏頃から現在のスタイルに落ち着いていったと聞きます。
そんなローカルなストリートフードに対する想いが詰まった一品が、もう一つ出てきます。
「AH HUA KELONG LALA CLAMS」xo sambal, deep fried wonton skin & chinese spinach
続いて、こちらも現地で取れる「ララクラム」をゼラチンで固めて、パイティー風に。
シジミとアサリの間のような貝で、出汁を取るときにはよくつかわれるそうですが、なかなか主役にはならない食材を、クローズアップするスタンスもいいですね。
サンバルソースにXO醤を加えたオリジナルソースも秀逸。
この一連のアミューズでも、かなりシンガポールを味わった満足感を抱きますが、コースはこれからがクライマックスです。
・シンガポール国産の食材を昇華した第2パート「PLATES」
ストリートフード満漢全席のようなアミューズが終わった後に続くのが、「PLATES」と名付けられたパート。
いわゆる前菜~魚・肉のメイン~飯物に続く一連の構成なのですが、いったいどんな料理が出てくるのでしょうか?
「LABYRINTH ROJAK」Edible Gardens herbs, natural stingless bee honey & jackfruit sorbet
10種のエディブルフラワーやハーブなどを使ったサラダ。
ジャックフルーツのソルベとはちみつをドレッシングにしています。
このはちみつは、シンガポール沖合のインドネシア領バタム島で獲れたものだとか。
「JURONG FISHRY」catch of the day
いわゆる日替わりの魚料理。
この日は、ザリガニのフリット。わさびのソースと、海ぶどうがアクセント。
「GRANDMA’S FISH MAW SOUP」yellow tail snapper fish cake, textures of fish maw & tofu puree
「FISH MAW」とは魚の浮き袋のこと。中華圏では、お粥の具などによく使われますが、ここでは裏ごしして高級感のあるスープに。
花のようにあしらわれている魚の身は、高級魚イエローテール・スナッパー。
スズキ目フエダイ科になるのですが、日本ではあまり出回っていないので、ちょうどいい和名が思いつきませんが。
「LOCAL WILD CAUGHT CRAB」signature chili ice cream, egg whites & salted mackere
ざっくりと言えば、シンガポールで有名な「チリ・クラブ」の進化版でしょうか。
地元で獲れた天然のカニに、瞬間冷凍されたチリパウダーが新食感。
ここでまだ中盤がおわったくらい。今後はどういう展開になるのでしょう?
「NIPPON KOI FARM SILVER PERCH “OTAH”」otah rempah, all-spice leaf, kaffir lime oil
シンガポール内にある錦鯉の養殖場「NIPPON KOI FARM」で育てられた淡水魚「SILVER PERCH」をスープで。
付け合せには、マレー半島の伝統料理、魚のすり身をカレーペーストとともに蒸した「オタ」が添えられます。
「“SUSTAINABILITY”」“chicken”-“chicken”-chicken satay, muah chee, Mr Anand’s peanut sauce
肉のメインは、サテです。
卓上七輪で出してくれるのですが、固形燃料ではなく、ちゃんと炭が入ってます。
このあたりのこだわりにむ、抜かりはありません。
「鳥のサテ」とメニュー名にありますが、この中に一本、高級食材が隠れています。
それは行ってからのお楽しみということで。
「CLAYPOT “ANG MOH” CHICKEN RICE」 kampong chicken, local mushrooms, grandma’s chilli sauce
そして、シンガポールと言えば、やっぱり「海南鶏飯」。
まずは土鍋で炊いたところをプレゼンテーションしてくれて、個別に盛り分けて給してくれます。
味は、お上品。再構築というより、「海南鶏飯」の高級版といったところでしょうか。
さてはて、この「PLATES」のパートで、食ったぁ!という満足感はすでに100%を超えていたのですが、続くデザートも充実。
一つのデザートコースを形成していると言ってもいいくらいのものでした。さて、別腹で足りるのか?
・これだけでコースとも思える第3パート「DESSERT」
前菜からメインの料理に、「ふー、食ったぁ! 頭に入れておくべき情報量もパンパン」と思っていたものの、これがまだまだ続くんです。
PRE DESSERT “NATS ABOUT COCO” house made nata de coco, aloe vera, textures of fresh market coconut
デザートの最初は、プレデザートで「ナタデココ」。あくまで“プレ”です。
アロエなどでつくられたナタデココの上に、ローカルマーケットのココナツを凍らせたパウダーをふんだんに。
液体窒素系を斬新なスタイルだとは思わなくなりましたが、この食感は好きなので、定番だとしても嬉しいです。
南国で、この冬景色を見るのは、オツなものです。
PALATE CLEANSER 「CLAM LEAF SNOW」local herbs, peach gum & textures of grapes
で、プレデザートの後に口直し?
ハーブが混ざったかき氷に、濃厚なグレープジュースをシロップ的に。
SWEET 「SOY BEAN CURD」 local hashima, snow fungus, chrysanthemum
メインのデザートの一皿目は、豆乳プリン。
林蛙の卵巣のHASHIMA、シロキクラゲ、食用のキクの花が添えられています。
SWEET “PASAR MALAM” local corn, Hay Dairies goat milk butter, gula jawa-salted egg popcorn
メイン2つ目は、「夜市(Pasar malam)」と名付けられたもので、凍らせたコーンやシンガポール内の農場で搾出されたヤギ乳からつくられたミルク、パームシュガーで味付けされた綿あめと盛りだくさん。
PETIT FOURS
プティフールも2本立て。
チョコの小菓子とキャビアも載ったケーキサンドイッチ。
と、デザートだけで、都合6皿。
もはやデザートコースの様相を呈しています。
そのどれもが、地元で愛されてきたローカルフードだったり、シンガポール産の食材をハイセンスなレストランでも通じるデセールに昇華したもの。
最後の最後まで、気が抜けないコースでした。
・まとめ
以上、シンガポールの『Labyrinth(ラビリンス)』の紹介でしたが、いかがだったでしょうか。
私自身、シンガポールにも、こんな伝統を活かしながら、イノベーティブに落とし込むレストランがあったのかと驚いたのですが、本当にシンガポールのローカルフードを総ナメしているところは凄みさえ感じました。
そういった意味では、旅行者として“シンガポールの今”を味わいたいなら、海南鶏飯もチリクラブもサテも、様々なローカルフードも食べられるわけなので、この店だけ行けばじゅうぶんかもと思えるほど。
この記事を書いているそばから、ヨーロッパ料理としての現在のシンガポールを象徴する『オデット』とともに、週末弾丸シンガポールにまた行きたくなって、スカイスキャナーで航空券をチェックしている有様……。
『Labyrinth(ラビリンス)』店舗情報
コース料金:ランチ 78~128SGD(約6,500~10,500円)、ディナー 178SGD(約15,000円)
営業時間:ランチ<火~金曜>12:00~14:30、ディナー 18:30~23:00 定休日:月曜
電話番号:+65 6223 4098
住所:8 Raffles Ave, 02-23, Singapore
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