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初回にして、真打ち登場! そう、2015〜18年と4年連続でアジアNo.1にノミネートされているバンコクの『ガガン』(2013年はNo.10、2014年はNo.3)。
この後が続くのかと書いている本人が心配になるのですが、何とかなるでしょう。出し惜しみをしても仕方がありません。
*『GAGGAN』は、2019年8月24日をもって閉店しました。
そして、2019年11月にシェフのフルネームを課した『Gaggan Anand』がスクンビットにオープンしています。
4年連続アジアNo.1レストラン、タイ・バンコクの『ガガン』を体験
バンコク・スワンナプーム空港2階の到着ロビーを出ると、すぐに4階の出発ロビーに向かいます。
乗り換えではなく、ここでタクシーを捕まえます。時間帯にもよりますが、到着ロビーのタクシー乗り場は、長蛇の列ができていることも多いので、タクシーで市内に向かう場合は、これが一番早い方法かもしれません。
アソークに取ったホテルにチェックインし、シャワーを浴びて、出かけます。
BTS(スカイトレイン)の「チットロム」駅で降り、そこから徒歩で10分強。周囲を見たいと思って歩いたのが間違いでした。
陽が落ちているのに、バンコクは、それにしても暑い。したたる汗が止まりません。日本と比べれば、タクシーは格段に安いので、無理せずタクシーを使ったほうが無難でしょう。
アジアNo.1の称号をほしいままにするバンコク『ガガン』に突撃
タイの首都バンコクにあるトップ・レストランですが、タイ料理ではなく、インド料理。
それも、「プログレッシヴ・インディアン・キュイジーヌ」と自称しています。
メニューは、『GAGGAN EXPERIENCE』というコース1つのみ。4,000タイバーツ(約13,500円)なので、ワインなどのドリンクと合わせて2万円というのが平均的な予算でしょうか。
これはアミューズか、前菜か。怒涛の小皿攻勢にメロメロ
オーナー・シェフのガガン・アナンド氏は、インド・コルカタ出身で、バンコクのストリート・フードで腕を磨いた後、スペインの伝説的なレストラン『El Bulli(エル・ブジ)』で研鑽を積んだシェフ。
その真骨頂は、席に着き、とりあえず頼んだスパークリングワインの後の一品目から実感できました。
太めの試験管に入ったライチのエキス。添えられた実も頬張り、南国気分を味わった次には「ヨーグルトの爆発」と題された小品。
口の中で表面が弾け、ジュースに近いヨーグルトが口に溢れます。プチッ、ジュワーっという感じ。この手法は、『エル・ブジ』卒業生が、自分なりに使っているのをよく見かけます。
そして、ゼラチンフィルムに入った粉末。これはなんとワサビのパウダー!
こういった一口サイズのアミューズが3~4皿最初に出されるレストランなら多く体験してきましたが、『ガガン』のすごさは、これがまだまだ続くこと――。
目の前に繰り広げられる料理の数々に付いていくのが精いっぱいな状況。
メニューを覚える気力さえなくなってしまいましたし、読んでくださる方も大変でしょうからメニュー名は端折ります。
ただ、言えるのは、どれもがアイデアに満ちた品ばかりであること。
今のところ、インド・テイストはそれほど強くありません。これらのプレゼンテーションは、冒頭に書いたように『エル・ブジ』流とも言えますが、徐々に実感してきたのは、むしろ懐石に影響を受けているかな?ということです。
この晩は出ませんでしたが、日本酒を使ったソルベに「酔っぱらいのサムライ」というタイトルを付けていたとか。
聞くところによると、相当な日本びいきのようです。そう思うと、ユニバーサル・テイストの懐石というような新ジャンルの料理と言っていいような気がします。
野沢菜のようにあしらった青菜の上に鰻が載った皿に続き、ようやく少しインド的なテイストに戻っていった「黒にんじんのアイスクリーム、にんじんのクリスピー・フラワー」。
サービスマンが、「これは驚きますよ」と持ってきた「チャコール(木炭)」。タネを明かせば、イカ墨のフィッシュ・コロッケです。
そして、「マジック・マッシュルーム」。言葉遊びでしょうが、ジオラマのようにあしらったキノコとトリュフの意外性には、確かにちょっとだけ”魔法”を感じてしまいました。
(↓記事は下に続きます)
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ガガン流『抹茶』の解釈から、ストレートなインド的な旨さに急展開
テーブルの前に座りながらも、ポケモン集めに右往左往スポットを歩き回るような、一連のアミューズを体験した後に、急展開。次の『レッド・マッチャ』は、料理名の通り、抹茶スタイルです。
まずはトマトとブドウの実を食べた後、専門のスタッフが 茶筅(ちゃせん)で赤い液体を泡立てます。
すすってみると、酸味が聞いたスープ。一瞬何これ?と思いましたが、冷静に味わうとトマトのお茶でした。ブ
ドウを食べることで、少し味覚が錯覚を起こしていたよう。こういったマリアージュも面白いものです。
「レッド・マッチャ」。日本人だからこそ、この面白さを楽しめるのかもしれません。
次はどんな技がくるか?とドキドキしながら待ったメインの「子羊のタンドリ」。
サンスクリット文様のようにあしらわれた、ゼラチン状のソースに目を奪われますが、かなりストレートなテイスト。インド料理の王道!
いい意味での肩透かしですね。純粋に肉の旨みが出ています。
最後は、3種のカレー。インド現地の弁当箱型のブリキの器で供される、キッチュなプレゼンテーションはお手の物ということでしょうか。
でも、こちらも単純に美味しいカレーでした。今まで食べてきたものの中で、確実に5本の指に入るクオリティ。
人の好みは様々でしょうが、個人的にこのコース展開は好きなタイプです。
例えば、あのデンマーク・コペンハーゲンの『noma(ノーマ)』に行った方々のなかからは、小皿料理で始まり、そのまま終わっていくスタイルに、「どこで盛り上がればいいのかよくわからなかった」という話も聞きます。
一方で、この『ガガン』は、前半でかなりの冒険をしながらも、メインの肉→〆のカレーとクライマックスを付けています。そのあたりは、やはりインド人シェフのなせる業でしょうか。イノベーティブでありながらも、インド映画のようにきちんと楽しませるツボを押さえたストーリーを心得ているように思えます。
体験型でもある『ガガン』をめぐる3時間の小トリップ
デザートにも、一興が潜んでいました。
一見、半球のソルベなのですが、スプーンでハンマーのように叩いてくださいと促されます。
その言葉通りに行ってみると、予想以上に勢いよく弾けます。
せっかくのきれいな皿が……と思ってしまったのですが、ここでサービスマンが「ビューティフル」と楽しそうに微笑んでくれました。それを聞いて、「ああ、なるほど」と、こちらもにんまりしてしまいます。
20世紀美術の巨匠マルセル・デュシャンが、作品である便器が搬送の際の事故でヒビが入ってしまったことに「より美しくなった」と語ったことがあります。
そんな逸話のように、『ガガン』の料理には、ある種のハプニング・アートのような感覚も含まれているのだろうと、先のサービスマンの言葉からうかがえます。
料理の話なのに、たとえが悪かったでしょうか。
それなら、ペンキを投げつけることでアート作品にしたジャクソン・ポロックのような新表現主義を引き合いに出してもいいかもしれません。いずれにしても、客の手を使わせることによって、料理を完成させるところに、そんなスタンスを感じました。
そもそものコース名も「EXPERIENCE(=体験)」です。
やはりアジア50ベスト・レストランでNo.1であることに触れておかなければならないでしょう。アジア・ナンバーワンかどうかを評価するほどおこがましい人間ではありませんが、少なくとも今の私にとって、この『ガガン』は、”体験型のレストラン”としてオンリーワンになったことは事実です。
あなたにとってはどうか? それを確かめに、ぜひバンコクを訪れてほしいと思います。
『GAGGAN』店舗情報
営業時間:ディナー18:00~23:00(原則的に18:00~18:30と21:00~21:30の2回スタート)
定休日:無休
電話番号:+66 2 652 1700
住所:68/1 Soi Langsuan, Ploenchit Road, Lumpini, Bangkok
オフィシャルHP(英文)はこちら
ドレスコードや店の雰囲気
日によってある程度違いはあるでしょうが、接待会食よりもデートや旅行客などプライベートな利用が多いようです。タイ人、欧米人、中国人、日本人とまんべんなくいる客層でした。
男性なら、トップは襟付きで。ボトムは半ズボン、ビーチサンダルはNG。清潔感はマストということさえ気にしていれば大丈夫でしょう。女性も、それほど堅苦しくはないですが、アジアNo.1レストランなのでオシャレして行ってください。
店の地図