「ミシュランガイド香港澳門 2020」で一つ星を獲得した「ザ・ペニンシュラ香港」のフレンチダイニング『ガディス』。
その実、オープンは1953年にまで遡り、東洋で初めて本格的な西欧料理を提供したレストランという肩書まで持つグランメゾンです。
現在シェフを務めるのは、2019年に就任したアルビン・ゴビル氏。
20代という若さで老舗中の老舗の伝統と革新のどちらをも引き受ける、その手腕の確かさを堪能してきました。
平均予算:ランチ 10,000~15,000円、ディナー 30,000~40,000円/「ミシュラン 香港 2021」1つ星
「ザ・ペニンシュラ香港」の、老舗中の老舗なフレンチダイニング
香港でホテルフレンチ、グランメゾンと言えば、フォーシーズンズの『カプリス』、マンダリンオリエンタルの『アンバー』、そしてザ・ペニンシュラ香港の『ガディス』を押さえておけば、ほとんどこと足りるのでは?と思います。
それらの中でも、この『ガディス』の歴史は古く、一説には東洋ではじめて本格的な西洋料理を提供した店という称号を持つほど。
そんな老舗中の老舗とも言えるグランメゾンですが、2019年にシェフが交替したこともあり、香港を訪れた際にうかがってみました。
先に結論から書いてしまうと、現在指揮を執るアルビン・ゴビル氏は、まだ20代と若いのですが、伝統のなかに爽やかな風を吹かせているということが印象的でした。
比喩としてだけではなく、トータルなイメージとしては正統なフランス料理の域を外れることはないのですが、ハーブの使い方をはじめとしたディテールには、現代っぽさも忍ばせているという、離れ業をやってのけています。
そもそも押しも押されぬグランメゾン、香港フレンチの名店の一つですが、今後評価も上がってきそうな雰囲気、これからさらにおもしろくなっていきそうな気配が漂っていました。
(この記事を書いている12月17日に、まずは「ミシュランガイド 香港 2020」で1つ星獲得というニュースが飛び込んできましたが、序章にすぎないと捉えています)
・ラグジュアリーホテルのなかの隠れ家レストラン
訪れたのは、12月上旬。香港では既にクリスマスムードが漂っています。
『ガディス』の場所はファーストフロア(英国式の数え方なので2階だと聞いていたので、いつものクセというか、『スプリングムーン』がある正面の階段をあがっていこうとしたのですが、違いました。
アフタヌーンティーで有名な『ザ・ロビー』の脇を抜けて、一階の専用口から入るとのこと。
大きなホテルの中のダイニングですが、隠れ家感があっていいですね。
専用のクラシカルなエレベーターを上がると、荘厳なダイニングルームが見えてきます。
・メニューについて
メニューは、もちろんアラカルトもコースも用意されています。
ランチコースはプリフィクスで、2 Coursesが488香港ドル(約7,000円)、3 Coursesが588香港ドル(約8,500円)、4 Coursesが88香港ドル(約10,000円)。
ディナーは基本的にはおまかせ、5 coursesで2,188香港ドル(約31,500円)、8 courses at 2,388香港ドル(約34,000円)。
それぞれワインペアリングがつくと、2,888香港ドル(約41,000円)、3,188香港ドル(約41,000円)。
最近の受賞歴をみると、「2019 Forbes Travel Guide Five-Star restaurant」はいったん置いておいて、「Pinor – China’s Wine List of The Year Awards 2018」「Wine Spectator 2019 – Best of Award of Excellence」「Wine Luxe Magazine: Wine by The Glass Restaurant Awards Gold Medal 2019」などワインのラインナップには定評のあるレストランであるので、ペアリングのコースはおすすめです。
まずは、ペニンシュラのプライベートブランドの白ワインで乾杯。
シャブリ産とのことで、すっきりしたテイストでありながら、しっかりとした深みも潜む奥行きのあるワイン。
これは香港仕様で、各地での「ザ・ペニンシュラ」では、それぞれ内容の違うプライベート・ブランドのワインもあるそう。
さて、これからコースのスタートですが、今回はちょっと特別にランチにディナーのメニューを織り込んでもらいました。
・高級食材を使いながらも、そこに頼り切らないしっかりとした料理
「Amuse」
アミューズは冷菜から。ポテトのピュレに、キャビアを乗せた小品から。
口通りの滑らかさに、レストランの格が実感できます。
パンは三種から選べました。
もう一つクロワッサンがあったのですが、ソースが美味しそうな店では、残ったソースを楽しむために、シンプルなバゲットやブリオッシュにしておくのが、フレンチ好きの小さな幸せです。
「Brittany langoustines/法國海螯蝦」
すっきりと美しいルックスですが、赤座海老にキャビア、ウニ、そして金箔とてんこ盛り。
フェンネルで軽く香りづけしているところに新鮮さが出ています。
「Hen Egg York Ravioli/蛋黄雲呑」
「半熟卵のラビオリ」。
メニューには、キクイモと季節のキノコなどの食材名が載っていたので、冷菜から温菜に移っていくブリッジのようなメニューを想像していたのですが、そんな安易なメニューではありませんでした。
隠しキャラとして出てきたのが、黒トリュフ。
スタッフの方がその場で削っていきます。
トリュフの香りを生かすのに、プレーンなオムレツをはじめ卵料理が使われることが多くありますが、この半熟卵が中に詰まったラビオリも、理にかなっています。
私見ですが、トリュフは、料理としては意外と難しい食材ではないでしょうか。
トリュフを主役にしすぎると、それは極上の刺身のように素材頼りになります。
逆に、合わせる料理に凝りすぎると、トリュフの良さが生きないということもしばしば。
そんな経験をいくつかしてきたのですが、トリュフを生かしつつ、そこに頼り切らずに「料理」として出すという絶妙なバランスをしっかり出していたことが好印象。
20代という若さでグランメゾンのシェフを任されるだけあって、ただ者ではないことが、この一皿からもうかがえました。
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