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香港のガストロノミー・シーンで、もっともポテンシャルを感じる逸材と言っても過言ではない『VEA』。
広東料理とフレンチのフュージョンを超えて、この店でしか出せいない個性的な表現に昇華した料理は、まさに今が食べどき。
アジア全体での存在感も今後増していくこと間違いありません。
平均予算:20,000~30,000円/「ミシュランガイド香港 2021」1つ星、「アジアのベストレストラン50 2020」No.12、
香港イノベーティブの最新鋭。
NYの『Daniel』などを経たVicky Chengシェフによるレストラン。
中国料理とフランス料理のフュージョンと聞いていたので、食べる前は「ヌーベル・シノワーズ」とどう違うのかな?なんて考えていましたが、全然違いました。
あくまでコンテンポラリーな表現として、自分にできるベストな料理はこれ!という説得力のあるミクスチャーになっています。
中国料理をコンテンポラリーに表現するというのは、香港ではもっとも探していたタイプのレストランだったので、なんで今まで気づかなかったかなとちょっと反省さえしてしまうクオリティの高さだったとも言えます。
そう、できたばかりのレストランだとなぜか勘違いしていたのですが、聞けば、オープンは2015年。
2016年度版以降、ミシュラン1つ星を獲得し続けています。
ただ、初期に伺った方のレポートなどを見ると、現在よりもう少しフレンチよりのアプローチだったようなので、今出会って良かったということにしておきます。
場所は、セントラルエリアですが、最寄り駅は「上環」。
「The Wellington」というモダンなオフィスビルの30階にあります。
『VEA』という店名は、Vickyシェフの名前と、共同オーナーでAntonio Laiさんの頭文字から。
Antonioさんは、2015 Diageo World Class Hong Kong & Macau でチャンピオンに輝いただけでなく、『Quinary』『The Envoy』『Ori-Gin』という注目店を手掛けているバーテンダーなので、覚えておいて損はない香港グルメ界のキーパーソンです。
・メニューは、Tasting Menuのみ
ディナーのみの営業で、メニューは「Tasting Menu」一本。料金は1,680香港ドル(約24,000円)。
メインの2品は、追加料金で高級食材のメニューに変更可。
カクテルペアリングはHK$680(約9,800円)、ワインペアリングはHK$780(約11,000円)。
どれも10%のサービスチャージが追加されます。
「SNACKS」
まずはスナック第一弾で、三品一気に供されます。
まずは「燻製卵」。
これ食べると、中華圏にいる気分が高まります。
牡蠣のフリットのキャビア載せ。
フォアグラのクリスプ巻き。
生ハム、パイナップルと合わせています。
第二弾は、葉物と根菜を合わせた小品。
そして、甘めの昆布茶でペアリング。
それにしても、一つひとつ味がしっかりしています。
イノベーティブ系のコース最初のスナックは、言葉とおり、つまみ感が強いことが多いのですが、ここでも美味しさを追求していることが好印象です。
満席だったので、客席側を撮影するのは遠慮しましたが、店内は全てカウンター席。
ほんと目の前で調理してくれます。
・海老、アワビ、ナマコとメイン級の食材がクリエイティブに仕上げられた前半戦
「SPOT PRAWN」
醤油漬け的な海老は、序盤の山。
エディブルフラワーを添えられた玉子麺が付け合せに。
最後の仕上げは、テーブル上で、海老の味噌まで絞り出してくれます。
ビスクなど甲殻類のソースが好きな方にはたまらない逸品でしょう。
「SOUTH AFRICA ABALONE」
海老を前半の山と書いてしまいましたが、さらにその先に山場がありました。
アワビ、南アフリカ産とのこと。
「ROASTED SEA CUCUMBER」
そして、シグネチャーのナマコが出てくる前に、食材のプレゼンテーション。
20年ものの紹興酒をソースに使っているとのことで、その原酒を味見させてくれました。
料理の良さもさることながら、サービスが本当に気が利いています。
楽しんでもらおう、知ってもらおうという姿勢が嫌味なくでているところに好印象です。
そして、シグネチャー到着!
ナマコはクリスピーな感じに焼かれていて、そのなかにふんわりした蟹の身が合わされています。
ソースは、甲殻類のジュに紹興酒を加えたもの。ふくよかな優雅さがあって、ナマコの概念が変わりました。
☆ ☆
最初のスナックの時点で、かなりの力の入り方でしたが、さらに海老・アワビ・ナマコと息もつけない展開。
これでもまだ半分くらい。後半も引き続きどうぞ。
・魚、フカヒレ、大根とバラエティに富んだ中盤戦
海老・アワビ・ナマコとメインにも使える食材をクリエイティブに処理した料理が立て続けに給された前半でしたが、メインに続く後半もさらに高みに上り詰めていくような展開。
「LOCAL “MA YAU”」
ボラに似た香港産の「MA YAU FISH」のグリル。
付け合せは、ポテト。ソースには、中華ではたまに見かける、熟成したみかんの皮と黒いんげんを使っているそう。
「FISH MAU」
オプションのフカヒレ。キャビアとキヌアが入ったクリームソースと。
こんなフカヒレの食べ方があったんだ!と嬉しい驚き。
「CRISPY DAIKON」
クリスピー大根。日本産の大根を、4時間かけて火入れしているそうで、ソースは、鳥のジュ。
オプションで「WHITE TRUFFLE」に変更可で、そちらを強めに勧められたのですが、いやいや、この大根は食べたほうがいいです。
比べるわけではないですが、『レフェルヴェソンス』の「定点」のカブように、一般的な食材をどう美味しくするかという点では、この大根も名作の一つだと思います。
このタイミングで、口直し。「梅干しのソルベ」です。
元になった梅干しも一粒いただいたのですが、ほんと酸っぱ甘い!
中国流に言えば「干し梅(ワームイ)」です。
・直球ストレートなメイン
「WHOLE ROASTED CHICKEN」
メインのチキンの丸焼きをプレゼンテーションで。
個人的なことですが、過日『BELON』でランチをしていたとき、偶然隣に座っていたのが、この『VEA』のスーシェフの方だったのですが、彼が「『BELON』で使っているのと同じ鶏ですよ」と教えてくれました。
正直でよろしい、とも思ったのですが、自信の表れですね。
最後は「土鍋ごはん」で〆。
トリュフをふんだんにすって、目の前で仕上げてくれます。
そう言えば、この土鍋ごはんは、メニュー表には入っていなかったのですが、あるのとないのとでは印象が大きく変わると思っています。
アジア人だからかもしれませんが、ここで炭水化物が入る安心感ということもありますが、もしなかったら、フレンチのフュージョン料理と捉えて、私にはインパクトが薄かったように思います。
「BRIE DE MEAUX」
ファースト・デザートはさっぱり目。
日本産りんごのタルト。
瞬間冷凍のハーブを添えて爽やかさを出しています。
「LAPSANG SOUCHONG」
セカンド・デザートは、チョコなスイーツ。
下に敷かれたスモーキーチョコムースが、とくに斬新でした。
かなり濃厚なチョコが並ぶので、ヨーグルトソルベでさっぱり。
バランスがいいです。
スイーツ3品目。
メニューにはない、ちょっとしたお遊び的なスイーツがもう一個出てきました。
「MIGNARDIES」
ミニャルディーズ(プティフール)も盛りだくさん。
「どれだけ取ってもいいですよ」と言われたのですが、もうお腹いっぱいい。
2つばかし取ると、「いやいや、これも食べといたほうがいいですよ」と、どんどん皿に追加されていきます。
・『VEA』のまとめ
「ミシュランガイド香港」1つ星、「アジアのベストレストラン50 2019」No.34にランクインと既に高い評価を得ている実力店とは言えますが、それにとどまらない満足度でした。
社会情勢的に、香港に逆風が吹いていなければ、順調に上がっていくべきレストランであることは、確かです。
舌が慣れているということは認識しつつも、日本の店は味が美味しく、海外の店はアイデアが面白いと、自分のなかで知らず識らずのうちに区分を刷り込んでいた部分があったかもしれませんが、この『VEA』がすごかったのは、両方兼ね備えていることでした。
地域の食文化を取り入れながらインターナショナルな感覚にも通用するスタイル、純粋な美味しさ、コミュニケーションや気配りなどのサービスと、総合力ではアジアのなかで10本の指に入るレストランだと思います。
個人的には、もう少し食材を一般的なものに、価格を落としたコースをつくったら、どうなるかが気になりますけどね。
『VEA Restaurant & Lounge』店舗情報
コース料金:HK$1,680
営業時間:ディナー 17:00~1:00
定休日:日曜
電話番号:+852 2711 8639
住所:29 & 30/F, 198 Wellington Street, Central, 香港
オフィシャルwebページはこちら
予約に関して
予約は電話か、オフィシャルwebから(中国語・英語)。
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