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「アジアのベストレストラン50」では、毎年1桁台にランクインする、香港の、いやアジアを代表するフランス料理の名店『アンバー』。
比較的リーズナブルなランチコース「Weeknd Wine Lunch」でも、その地力の高さを十二分に堪能できました。
平均予算:ランチ 15,000~20,000円、ディナー 30,000~40,000円 /「ミシュラン香港 2021」2つ星、「アジアのベストレストラン50 2020」No.31、「La Liste 2020」No.268
アジアで3本の指に入るトップレベルのフレンチ
「ランドマーク マンダリン オリエンタル 香港」内にあるフレンチレストラン。
各地のロブション、シンガポールの『レザミ』や『オデット』、バンコクの『ル・ノルマンディ』などとともに、フランス料理らしいフランス料理を食べさせてくれる店としては、アジアを牽引する存在だと言っていいでしょう。
「アジアのベストレストラン50」でも強く、初年度の2013年にNO.4でノミネートして以降、’14年はNO.4、’15年はNo.6、’16年はNo.4、’17年はNo.3とすべて一桁。「La Liste 2018」ではNo.153、「ミシュラン 香港 澳門2018」では2つ星です。
ちなみに、香港の『ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション』は、ミシュランで3つ星なのですが、個人的には、この『アンバー』とクオリティに差はないと思っています。
重箱の隅をつつくようですが、この『アンバー』は数年前まで、たしか「モダン・フレンチ」にカテゴライズされていたと記憶していますが、2017年の「アジア・ベストレストラン50」の際に確認すると、「クラシック・フレンチ」に変更されていました。
「subtle Hong Kong influences(香港からの微妙な影響)」と補足付ではありますが。
基本的に、クラシック→モダン→コンテンポラリー→イノベーティブと、伝統的なフランス料理から遠ざかっていくわけですが、その境界線は曖昧。
定義はあるようでない、ないようである、1つの店のなかでもメニューによって横断していることも多々あるので、厳密に定義しようにもしきれない感覚的なものだと捉えています。
その感覚はとくに年齢によって変わってくるのでしょう。
20世紀のうちはヌーベル・キュイジーヌ(新しい料理)以前が「クラシック」で、それ以降が「モダン」くらいな感覚でおおむね一致していたと思いますが、ヌーベル・キュイジーヌと言っても、半世紀前の1970年代のこと。
となってくると、’80~90年代の料理も、現在では「クラシック」に入ってきてもおかしくないのかな?という気がしてきます。
そのあたりの定義を誰かやってほしいというが本心なのですが、多少のアウトプットの違いは棚に上げててでも、あえて今クラシックと名乗るのは、シェフが「フランス料理でありたい」という意志だということを、この『アンバー』では感じました。
・コストパフォーマンスでは、週末の「Weekend Wine Lunch」がおすすめ
高品質イコール高級ではないとは思っていますので、当サイトで紹介する店は、上限をだいたい2万円で設定しているのですが、『アンバー』のディナーだと予算を超えます。
コースメニュー自体で約28,000~37,000円の価格帯。ランチであれば、3~4 coursesが約8,500~12,500円ですが、週末にさらに便利な6 coursesプラス4杯のワインペアリングが付いた「Weekend wine lunch」が1,038香港ドル(約15,000円)でありました。
今回はこのコースを試してみます。
前菜、メインなど3-5メニューある各カテゴリーから、1皿ずつ選んでいくプリフィクス方式です。
内容は、2-3ヶ月ごとに変わっていくそうですが、プリフィクスなので、月に2回行っても、全然別の料理が食べられますね。
まずはシャンパーニュとともに、一口サイズのアミューズが続々と出てきます。
気の利いたフィンガーフードをつまみながら、シャンパーニュを傾ける、週末だからこその至福のランチタイム。
上にも書きましたが、スパイスとして「香港からの影響」というより「アジア全域からの影響」を感じるフルーツを多用したスナックが盛りだくさん。瑞々しい上に味が濃厚な果実を厳選しているようです。
・香港や日本をはじめアジア全域の食材にも目配せした前菜
アジアの食材という意味では、日本産の魚もフレッシュ。毎日、九州と北海道から直送しているそうで、これは玄界灘の鯖。
脂がのり、身が詰まった良い鯖なのは一口入れればわかるのですが、それほど手を加えてないのに、ちゃんとフレンチになっているのが不思議。
合わせるワインは、ドイツ側のアルザスのリースリングです。鯖の濃厚な味を、甘みでうまく相乗効果を出していますね。
続いては、きのこをセレクト。ポルチーニ、マッシュルーム、しいたけなどのコンビ。エスプーマのソースもマッシュルームのエキスが入ったもの。
ペアリングのワインは、シャルドネですっきりと。
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・フレンチの王道を身に着けながら、東西文化の融合を目指すシェフ、へリチャード・エッケバス氏
カトラリーのセットを変えてもらっているところで、閑話休題。
メインの前に、少しシェフのことを紹介しておくと、総料理長はオランダ人のリチャード・エッケバス氏。
『アラン・パッサール』『ガイ・サボイ』『ピエール・ガニェール』などの著名なレストランで修業を積み、フランス伝統料理に忠実でありながら香港ならではの東西文化の融合性を上手く取り入れることを信条にしているとのこと。
エリートコースをたどったキャリアともいえますが、香港やアジアの食文化に新鮮な驚きを感じたことを素直に公言しています。
オフィシャルHPには、「ヨーロッパと比べ、香港ではあらゆる物事が素早く動きます。魚はバケツの中で泳いでいたかと思うとすぐさまフライパンのなかへ入れられてしまうのです」「ここの人たちは、繊細な料理を食べています。極めて舌がこえており、私と同様に並はずれた料理にしか胸を躍らせてはくれないのです」などとコメントを寄せています。
・メインの肉料理で王道のフレンチへ
メインに合わせる赤ワインは、ピノノワールかカベルネ・ソービニヨン/メルローから選べるのですが、私にしては珍しく後者に。
肉料理に仔羊を選んだので、しっかりめにしてきたかったんです。
これは、非常にオーソドックなフランスの肉料理というイメージ。濃厚です。
前菜までは多少の変化球を織り交ぜていましたが、最後にピシッと「これぞ、フレンチ!」と唸らせる王道で締める流れは、結構好きなんです。「食べたー」っていう満足感が、ここで決まるような気がします。
・これでもかと出てくる一連のデザートにかみ締める週末の午後
でも、ここからが、またすごいかったので、一気にいきます。
口直しともプレデザートとも言えるフローズン・フルーツ。
そして、メインのソルベ。
と思ったら、もう一つメインデザートのショコラ。
さらに、コーヒーとともに出てきたプティフールも生菓子。
最後まで息を付く暇なしとも言える料理内容ですが、別に急かされている雰囲気は皆無なので、ゆったりできます。
最初のアミューズと、最後のデザートは、ゆっくり始まり、ゆっくり終わっていくという構成なのでしょう。だって、週末のランチなんですから。
はじめて体験した率直な感想は、「やっぱ、すごいな」ということでした。単に美味しさだけで言えば、日本にもここと匹敵する、いや上回るフランス料理は、いくつかあるように思えます。
ただ、力強さだったり説得力だったりという観点からみると、やはり日本ではなかなか味わえない領域に達しているな、と。アジアトップの底力をみたような気がしました。
『Amber』店舗情報
営業時間:ランチ 12:00-14:30、ディナー 18:30-22:30
定休日:無休
電話番号:+852-2132-0066
住所:7F, The Landmark Mandarin Oriental Hotel, 15 Queen’s Road Central, Hong Kong
オフィシャルHP(英文)を見る
ドレスコードと店の雰囲気
ドレスコードはスマートカジュアルですが、グランメゾンですので、できる限りきちんとした格好がオススメです。コミュニケーションは英語か広東語が話せる方なら、まったく問題ないでしょう。日本人客も見かけ、ある程度スタッフも慣れているようですが、日本語での細かな対応は難しそうです。
予約の仕方
予約は電話かオフィシャルHPから(広東語、英語)。
日本語で予約したい場合は、予約代行サービスがおすすめです。
店の地図
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