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京都を代表するモダンフレンチの一つ『レストランモトイ』。
フランス料理に、中国料理の技術をさりげなく取り込み、京都ならではのもてなしの心で客を迎え入れる――そんな独自のスタイルを生み出す精神を、考察してみました。
平均予算:ランチ 10,000~15,000円、ディナー 20,000~30,000円 /「ミシュランガイド京都 2021」1つ星
京都を代表するフレンチを極私的に振り返ってみました
なんかしっくりくるんです。
今や、京都を代表するフランス料理店とも言えるこの『モトイ』に対して、「なんか」なんていう、姪っ子の口グセのような言葉で語り始めるのは、滑稽な気もしないでもありません。
でも、その曖昧なところがしっくりくるという感覚は、重要なことじゃないかとも思うのです。
一般的に言えば、この『レストラン・モトイ』は、非常にしっかりしたモダンフレンチです。くっきりと言ってもいいかもしれません。
ミシュランの星を獲ったからというだけでなく、評価は高い店ですので、いろいろなところで、いろいろな人が、この店の良さを語っていますので、開き直って、私的に振り返ってみたいと思います。
・中国料理を習得したシェフが、初心を忘れずにフランス料理に転向
『レストラン・モトイ』には美味しいフランス料理ということに収まり切らない魅力があるということなのですが、それを紐解いていくと、まず前田シェフが中国料理のキャリアがあることに求められるかもしれません。
現在の料理も、最終的にはフレンチに落とし込まれるのですが、下ごしらえとして食材に油通しをしたり、ハタ系の白身魚を好んでいるように食材の選び方に、中国料理をやっていた影響が垣間見えます。
冒頭に「くっきり」したテイストと書きましたが、この店のブレのない味は、技術的には、前田シェフの根底に潜んだ中華料理の技法からにじみ出ている面も大きいと思います。
子供の頃からの憧れだったフレンチを志して飲食の世界に飛び込んだものの、就職したホテルではフランス料理部門に空きはなし。
とにかく早く包丁を握りたいと飛び込んだ中華の道で10年研鑽を積み、それを極めてから、初心を忘れず、フランス料理のキャリアを歩み始めたシェフです。
フランス料理と中国料理の融合としては、1980年代に香港で生まれたヌーベルシノワーズなどがありますが、前田シェフの料理はそれとは方向性が逆なところが斬新だと思っていました。
つまり、中国料理にフランス料理のテイストやプレゼンテーションを取り入れる料理は以前からあったわけですが、フランス料理に中国料理のニュアンスを取り入れたものは、意外にも類を見なかったのかも、と。
当初は、隠し味としてそんなスタンスを使っていた感がありましたが、最近では、広東料理の火入れで仕上げて豚バラ肉など、ストレートにこのテイストを出し始めたのも興味深く感じています。
2019年のお正月に訪れたときには、メニューに載っていないサプライズの料理として、現在の彼流の『マーボー豆腐』を出してくれました。
・勝負に勝つより、スタイルを確立するほうが重要
ここまでは、ある程度客観的な事実かもしれません。
でも、それだけでは、最初に書いた「なんか」は説明できないんですよね。
それを理解するヒントを得たのは、シェフと『食堂 おがわ』のご主人の対談取材をしていたときでした。
フランス料理と京料理の違いはありますが、同世代でもあり、京都の若手料理人を代表するお二人ですが、どこが繋がっているのかふしぎでした。
そんなときに、前田さんが言った一言が印象的でした。
「だって、小川さん、スケボーうまいんですもん」。
え、そこですか?!と最初は思ったのですが、なんだか妙に納得してしまったのです。
「少し上の世代(シェフは1976年生まれ)は、学生時代の部活などで、勝ち負けのある競技をやっていますよね。野球とかサッカーとか。でも、僕が10代だった頃は、横ノリのカルチャー(サーフィンやスケボーなど)が全盛で。あのカルチャーって、別に世界大会で勝つことなんてどうでもよくて、でも、きちんと自分のスタイルを持っているヤツがリスペクトされる。それを格好いいと思う感覚が根底には染み付いていますね」
話はさらに脱線します。
このサイトに紹介しているレストランのランナップを見て、よく「イノベーティブが好きなんですね?」と言われますが、自分のなかでは「イノベーティブ」という言葉に対してさほど思い入れはありません。
イノベーティブは、日本語で「革新的」という意味。
最初に何かを生み出した人は確かに革新的だったんでしょうが、そのスタイルが広がっていくに連れ、模倣が生まれてしまうものです(言葉が悪いなら、習得と言ってもいいです)。
それは、多かれ少なかれクリエイティブに関わっている以上、決して逃れられないジレンマのようなものです。
だとしたら、イノベーティブを模倣したものはイノベーティブか?という永遠の矛盾ループと付き合わなくちゃいけなくなるはずなのですが、料理関係のほかの評論家やライターの方から、あんまりそんな話を聞いたことはありません。
・イノベーティブではなく、オルタナティブ
むしろ、私は「オルタナティブ」ということを意識しています。
直訳すると、「もうひとつの選択、代わりとなる」というような意味。
音楽やアートの場合、「商業主義とは一線を画し、時代の流れに捕われない普遍的な価値を求める精神や、アンダーグラウンドな精神を持っている表現」を指します。
つまり、別にマーケティング的に新しいとか古いとかではなく、普遍的な価値を持つものを自分なりのスタイルで目指していたって良いわけです。
そんな感覚がたぶん、『レストラン・モトイ』の料理を「なんかしっくりくる」と感じることにつながっているんだと思います。
つまり、マインドの問題。
『レストラン・モトイ』で食事をしていて、この心地よさは何かを言葉にしようと試みるときに、料理の分野ではマインドを語るボキャブラリーが少ないことに、またモヤモヤしてしまったりもしますが、眼の前のテーブルの上には、確かに料理は存在しています。
現在の言葉では語りきれないそんなふしぎな魅力を、『レストランモトイ』は秘めているような気がしているんです、私には。
『レストラン・モトイ』のメニュー
ランチ
「collection de saison」 8,610 円
お肉料理がついたお昼のフルコースメニュー。前菜からデザート、食後のお飲物まで10皿
ディナー
「Creation」 ¥14,580
その日ごとの旬の食材と京都の文化を融合させたフルコースメニュー。前菜からデザート、食後のお飲物まで13皿。
※Lunch、Dinner共に別途サービス料10%
※追加オーダーをしない限り、追加料金はかかりません。
予約・通信販売について
電話かwebから。 web即時予約は、ぐるなびで受け付けています。
通信販売
『レストランモトイ』特製「モトイシェフのパパ餃子」が、通販でも入手できます。
2ページ目: 写真ギャラリー「2019年1月、お正月のディナーコース」 >
3ページ名:写真ギャラリー「2017年8月のランチコース」 >
『Restaurant MOTOI(レストラン モトイ)』店舗情報
営業時間:ランチ 12:00~13:00 (最終入店)、ディナー 18:00~20:00 (最終入店)
定休日:水・木曜
電話番号:075-231-0709
住所:京都市中京区富小路二条下ル俵屋町186
オフィシャルwebはこちら
店の地図
2ページ目: 写真ギャラリー「2019年1月、お正月のディナーコース」 >
3ページ名:写真ギャラリー「2017年8月のランチコース」 >
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