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タイの伝統料理や家庭料理を、ニュー・ノルディック・キュイジーヌを経たイノベーティブなセンスで表現する店としては、バンコクでは唯一無二。
80%のタイ食材と20%の輸入食材という意味で名付けられた『80/20(エイティー・トゥエンティー)』は、可能性の塊でした。
平均予算:ディナー 10,000~15,000円/「ミシュランガイド バンコク 2021」1つ星、「アジアのベストレストラン50 2020」No.47、「La Liste 2020」No.780
タイ・イノベーティブの最新鋭
場所は、タイ国鉄のターミナル「フワランポーン駅」と、BTSの「サパーンタークシン駅」のちょうど中間。
どちらからも徒歩で12-13分のジャルンクルン通り沿い。電車で行く場合アクセスは、あまりよくありませんが、ジャルンクルン通りは結構面白いので、歩くのも一興。
「サパーンタークシン駅」側には、ロビンソンデパートなどがある繁華街で、安旨店も周囲にたくさんあります。
ほかにマンダリンオリエンタル(フレンチの『ノルマンディ』や『ザ・バンブー・バー』は有名)のもこのあたりなので、食通としては外せないエリアです。
この『80/20』があるのは、「Oldtown Hostel」という宿泊施設の1階。その名の通り、木造のコロニアルスタイルが趣きのある建物なのですが、店内も良い雰囲気にリノベートしています。
ここに限らず、最近のバンコクのオシャレな店は、古いものをうまくリノベートしていることに感心しきり。
かなりセンスが上がってきていると思います。
・80%のタイと20%のグローバル感
店名の『80/20』に、彼らが追求したいスタンスが表れています。
80%のタイの食材、20%のその他の食材ということから名付けられたと聞きますが、それ以外にも、結果の約80%が主に原因の20%によって引き起こされるという理論から取ったと紹介する現地メディアなどもあります。
料理のカテゴリーで言うなら、イノベーティブになるのでしょうが、食べ終わったときに、私自身の率直な印象としては、8割がた「タイ料理を食べた―!」という気分になったことも付け加えておきます。
実際の調理法などを考えると、もう少し多くほかの食文化の要素が入っているのですが、印象としては8:2くらいに収まるところが不思議。
・おまかせメニューが中心
実際のメニューですが、つい最近からコースに絞ったようで、5 courses(2,800THB)と7 courses(3,500THB)に絞ったそう。
料金に大差ないので、7コースを選択。
バンコクなので、ワインではなく、カクテルで。
アミューズは3品。豚がかわいい。タイスタイルの包(バオ)の変化型です。
First「Smoked White Prawn Crude | Ants Eggs | Cured Foie Gras | Papaye」
まず1皿目は、スモークした海老とフォアグラ。パパイヤの上に乗っている酸味付けは、なんと蟻! きましたね、最初の皿から攻めています。
先入観なしに食べれば、レモンにも似た爽やかな酸っぱさで、パパイヤや海老とよく合います。
second「Local Oyster | Chakram | Local Aigae | Kaffir Lime」
2皿目は、牡蠣のフリット。シート状に火を入れたくさやと下に敷かれた自家製マヨネーズとそこに添えられた甘めのケチャップのようなソースが、どことなく日本人には懐かしい味です。
ここで一息ついて、もう一杯シグネチャーだというカクテルを。
スモークが中に込められている仕掛けでのコースターで蓋をされて出てきました。
(↓記事は下に続きます)
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・コース中盤から一気にタイなテイストに
序盤はタイの食材を使ったインターナショナル料理というような佇まいだったのですが、風向きが少しずつ変わり始めます。
third「Fermented “Bai Lieng” Curry | Fresh Crab | Rice of the Moment」
3皿目はバイ・リェン・カレー。「ココナツミルクでまろやかにしたのが、タイカレーの一般的なイメージかもしれないけど、これは伝統的なスタイル。
ガツンとくるよ」とはシェフの弁。
付け合せは黒米で、古代米のような堅めの歯ごたえが絶妙です。
予想していたより、早い段階で炭水化物が出てきましたが、タイにいるんだと感じられるので、ちょうど良い流れでしょう。
forth「Slow Cocked Pork Belly | Dehydrated Vegitables | Pork Consomme」
4皿目はポークのコンソメスープで、テーブル上で急須から注いでくれるプレゼンテーション。
しっかり、ゆっくりと柔らかく火を入れた豚バラの塊肉のまろやかさと、乾燥野菜の独特のコリコリ感が良い塩梅のコントラスト。
そして、このスープがなんともアジア的なテイスト。コンソメスープというより、台湾の牛肉麺などで使われるスープのよう。
fifth「Duck Breast | “Puk Ped” | Slow Cocked Onion」
5皿目、肉のメインは、カモの胸肉。焼き具合は抜群。程よく弾力がありながら、硬いとは思わせない仕上げです。
手前の“Puk Ped”のソースは、ちょっとマスタードが入っているでしょうか、アクセントがちょうどよい感じ。
口直しのシャーベットはスイカ系。暑いバンコクでは、身体を冷やしてくれるので、ありがたいです。
sixth「Jack Fruit | Soy Milk | Sesame」
6皿目からはデザート。ジャックフルーツのソルベに、凍らせた豆乳。ごまのフレーク。
seventh「coconut」
7皿目のデザート。こちらは、ココナツの各部位をつかって味や食感にバリエーションをつけたタイプ。
味もアイデアもお上手。アイスクリームを2個続けてくるところが、タイらしいと言えばタイらしい。
冷たいものをいくつでも欲したくなるくらい暑いので。
タイのストリートフードをアレンジしたものも入った小菓子で〆。
・“完成”されすぎていない美味しさが味わえる、アジアでも数少ない名店になりえる存在
シェフのNapol Jantraget(通称・ジョーさん)は、カナダのフランス料理などで修行していたはず。
ところどころにフレンチのテクニックが使われているのは確かなのですが、あまり印象には残りません。
そして、それがいいのです。あくまで食べ口は、タイ料理。
日本のイノベーティブ系は、フランス料理が出発点だったシェフが多く、さらに地力のあるシェフたちが多いので、かえってフランス料理から抜け出せていない傾向があります。
それは、安定した美味しさに繋がっているのですが、完成されすぎているというか、まろやかすぎると思うこともしばしば。
個人的には、もう少し粗くてもいいのではないか?と思うこともあります。
まあ、音楽でも完成したクラシックの凄さを楽しみたいときもあれば、ゴリッとしたヒップホップに心打たれるときもあるようなもの。
どちらが“正しい”なんて言い出したら、キリがありません。そのカテゴリーなりに、良さが出てればいいのです(ちなみに、シェフは、ヒップホップというより、竹原ピストルのような雰囲気ですが)。
アジア全体を探しても、こういったローカルなテイストを殺さずに、グローバルなセンスとも高いレベルで融合できているのは、東京の『傅』やバリ島の『ロカヴォール』、マニラの『トーヨー・イータリー』くらいしかまだ思い浮かばないので、今がまさに旬。行き時かもしれません。
『80/20(エイティ・トゥエンティ)』店舗情報
平均予算:3,000-4,000タイバーツ
営業時間:18:00-0:00 定休日:月曜
電話番号:+66 99 118 2200
住所:1052-1054 Charoen Krung Road, Bang Rak, Bangkok
オフィシャルHP(英文)はこちら
予約に関して
電話あるいはオフィシャルFacebookからメッセンジャーなどで。
英語・タイ語でのやり取りが面倒な方は、代行予約サービスがオススメです。
店の地図
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