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タイの北部チェンライ、そのさらに郊外にある『Locus Native Food Lab(ローカス ネイティヴ フード ラボ)』。
タイのメディアから最大限の称賛を浴びる一軒家レストランは、のどかな佇まいとは裏腹、伝統とコンテンポラリーな創造性のどちらをも飲み込む、怪物のような店でした。
平均予算:ディナー 5,000~7,000円
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伝統も革新も呑み込んでグルグル廻る、辺境に佇む現代タイ料理の騎手
チェンライの郊外にすごいレストランがあると聞きつけたのは、誰かの噂だったのか、どこかのメディアだったのか。
そんな記憶も定かではないのですが、とにかく店のFacebookページをブックマークして、近いうちに絶対行くと誓いながらも、半年くらい経ってしまった今年のGW。
ようやく、本当にようやく、行くことができたお店です。
で、結論から言えば、今年前半の最大のヒット。2019年に出会ったレストランのベスト3に入ることはすでに決定!
一昨年のマニラ『TOYO EATERY』といい、昨年の『JL Studio』といい、このベスト3に入ったなかから、翌年のアジアのベストレストラン50の「One to Watch」が出ると、私だけが主張しているのですが、ここはさすがに辺境過ぎますでしょうか。
・チェンライの郊外、田園風景のなかにぽつんと佇む一軒家
チェンライという都市自体、かつてはチェンマイからラオスに陸路で抜ける旅人たちの中継地になってはいましたが、観光資源が豊かなわけではないので、滞在する人は多くはありません。
さらに、この『ローカス ネイティヴ フード ラボ』があるのは街の中心部から約5km離れた郊外。
リゾートホテルでもなければ、本当にこんなところにすごいレストランがあるのか?という不安がないわけではありませんでした。
街の中心部、バスターミナルの近くに宿を取り、予約した19時の30分前。
配車サービス「Grab」で呼んだ車に乗り込んだものの、ドライバーが地図を見て、「こんなところには行ったことない、ちゃんと着くかなぁ…」と弱音を吐き出す始末。
え、現地の人でも行かないエリアなの?と驚きましたが、いやいや、Googleマップの案内に従って行けばいいだけでしょ?と高をくくっていました。
10分強で着くと表示されていたので、道を多少間違えても大丈夫だと思ったら、この運転手、スマホの地図を見るのが苦手みたい。まったく違う方向に進んでいます。
仕方ないので、自分自身ですべてナビして、たどり着いたのが、ちょうど19時。
都会だったらキレッキレになっていたかもしれませんが、なんだか、これも旅の思い出だって許せてしまう場所。のどかです。
目的の『ローカス ネイティヴ フード ラボ』は、田園地帯にぽつんと佇む一軒家でした。
店内は、ほどよく田舎っぽさもあり、ほどよくおしゃれ。嫌いじゃないです。
カウンター席に案内されると、「今日は19時から一斉にスタートする予定で、まだ到着していないお客さんがいるので、ちょっと待ってね」とのこと。
なんだかのどかです。
・ディナーのみの営業で、コースは3部構成の1本のみ
待っている間に、シェフと少し話せました。
コースは一本のみで1,500THB(約5,500円)、安い!
いわゆる9皿のコースとも言えるけど、3部構成で、最初の1~7皿が「クリエイティブ」、次に「トラディショナル」、最後は「デザート」とのこと。
「どういうことかは、食べていけばわかるから」と笑います。
ドリンクもあんまり種類がなくて、と。
ノンアルコールは、ミネラルウォーターやジンジャーエール、コーラ、自家製オレンジジュースなど。
アルコールは、ワインをボトルで頼むか、自家製の梅酒だそう。
というわけで、梅酒。リカーや砂糖を替えたものが2種あって、こちらがダークめな方で沖縄の黒砂糖をつかっているそうです。
コース第1部:クリエイティブ
前置きが長くなってしまいましたが、ようやくコースのスタート。
最初は、ウェルカムドリンクとして、5つのハーブの炭酸飲料。
アミューズは、パイナップルとタイの味噌を合わせた一口サイズの「マーホー」。
『nahm(ナーム)』や『Le.Du(ル ドゥ)』などで食べてきましたが、それぞれニュアンスが違うのが面白いところ。
日本の漬物のように家庭の味があるのでしょう。
この店は、さっぱりめでした。
最初に話してくれたように、たしかに一斉に料理を作り始めます。
で、仕上げ終わると配膳し、メニューの紹介をシェフ自らが行います。
この光景が、なんだかほっこりした良い雰囲気です。
ただ、私がいたので、毎回タイ語と英語の2バージョン。正直、面倒くさかっただろうなぁと感謝です。
最初の皿は、チリビーンズをタピオカでくるんだものから。
青菜は自家菜園産。
チャーシューの上にスパイシーサラダ。
チャーシューの皮は、パリッを通り越して、ガリッっというくらい深く揚げられているところが特徴的でしょうか。
サラダは、バナナブラッサムが中心で、自家製マヨネーズが添えられます。
チキンのソーセージと鶏皮のブリット。米からつくられたソースだと聞きましたが、味噌っぽいテイストです。
付け合せは、カボチャ、ズッキーニ、ナス、マッシュルームなど。バジルペーストで味を整えています。
ナスのコンフィ。トロトロになるまで煮込まれています。
添えられているのは、川魚のカリカリ焼き。ソースは、マスタード・マヨネーズです。
☆ ☆
味については細かく書きませんでしたが、味もバッチリ。
素直に美味しいです。
伝統的な郷土料理や家庭料理を、現代的なスタイルで提供するという、ツボを得た表現。
そう来たら、バリ島の『Locavore』やマニラの『TOYO EATERY』など、国は違えど、このスタイルの第一人者たちの名前を引き合いに出さずにはいられません。
けれども、この後にさらに意外な展開が待っているとは――。
(↓記事は下に続いていきます)
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・実は、料理の鉄人だったシェフ
メインの肉料理は、「長期熟成した鴨」。
これを説明してくれるときに、シェフは「日本で言えば熟鮨のようなもの」と。
え、ナレズシ? 日本人でもどれだけ知っているか?という言葉を、チェンライで耳にするなんて!
聞けば、このKongwuth Chaiwongkachonシェフは、以前、寿司シェフをしていた経験があるそう。
梅酒にしろ、日本のことも詳しいなぁとと思っていたのですが、そのキャリアを聞いて納得しました。
さらに調べてみると、店を立ち上げる前は、チェンマイのハイエンドリゾート「Dhara Dhevi Chiang Mai(ダラデヴィ・チェンマイ)」の日本食レストラン「蓮 Ren」でシェフをしていたそうです。
一時期、チェンマイの日本料理店ではトップに数えられる有名店だったんですが、その評価は、彼のおかげだったんですね。
さらに、当時、タイ版の『料理の鉄人』に出演。
見事、優勝を勝ち取った経験もあるそう。
口直しは、はちみつのソルベ。
ここで小休止。
コース第2部:トラディショナル
口直しを挟んだ後、一気に展開が変わります。
タイ北部の伝統的な家庭料理が、並べられました。
実はこれらの料理、第1部で出された料理の、言ってみれば元ネタ。
例えば、バナナブラッサムを使ったサラダは、伝統的にはこのように作られるけれども、現代的に作ると前半のようなものになるということです。
この展開、すごいことだと思います。
クリエイティブな指向を持つ作り手は、たとえネタ元があっても隠したがるものだと思っていました。
その秘密を明かしてくれるとしても、少しだけこっそりというくらいが常。
その気持は理解できましたので、気付いていても書かなかったこともあります。
新しいことをやりたいという欲求に、歴史や伝統との関係が邪魔になることだってあると、私も思っていたからです
けれども、ここでは、前半で出てきたクリエイティブな料理のすべてに対して、そもそもこんな料理があったから、ああいう料理を表現してみたんだよと、すべて包み隠さずタネ明かしをしていきます。
少し難しい話になりますが、だからアジアは面白いなぁと思います。
一直線に進む歴史観を持つ西欧文化だと、過去や伝統はあくまでも「昔のこと」です。
それに比べて、アジア、とくに仏教的な輪廻の世界観では、過去も現在もいっしょくたになり、ぐるぐるスパイラルを描くように、進んだり、戻ったり。
深読みしすぎなのは承知ですが、そんな輪廻転生さえ感じさせる世界観の料理が、タイの地方都市のさらに片隅で具現化されているなんて!
コース第3部:デザート
最後に、デザート。
バナナやマンゴーを使ったさっぱりした味で〆ます。
その後は、ほぼチルアウトタイム。客は皆、スタッフや仲間と談笑したり思い思いに食後の余韻を過ごしていましたが、私は店の中を観察。
人の本棚を見るのは大好きなのですが、ロブションからノーマ、居酒屋から寿司の技術書まで並ぶラインナップに、この店のセンスの一端がうかがえたような気がします。
一息ついて、会計を済ませた後、行きにも使ったGrabで車を呼びます。
シェフは「なかなか見つからないから、最悪の場合、僕が送ってくよ」と言ってくれたのですが、すぐに見つかりました。
ラッキーなのか、アンラッキーなのか。
でも、この店を体験できたことは、確実にラッキーなことでした。
また行こう!
『Locus Native Food Lab(ローカス ネイティヴ フード ラボ)』店舗情報
予算:ディナー 1,500~2,000タイバーツ(5,000~7,000円)
営業時間:18:00~23:00
定休日:月曜
電話番号:+66 65 023 2627
住所:171/24 B.Santarnlhuang T.Rimkok A.Muang
オフィシャルwebページはこちら
予約に関して
予約は電話か、オフィシャルwebから(タイ語・英語)。
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店の地図