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「アジアのベストレストラン50 2017」へのノミネートをはじめ各ランキング上位を総ナメにする最注目レストラン『ル・ドゥ』。
バンコクの新世代を代表する30代前半の若きシェフ、トン氏が繰り出すタイ料理のイノベーションとは?
その真相を探ってみました。
平均予算:ディナー 7,000~10,000円/「ミシュランガイド バンコク 2022」1つ星、「アジアのベストレストラン50 2023」No.1、「La Liste 2020」No.1148
旬折々のタイの食材を用い、NY仕込みのテクニックで新たなタイ料理を追求
統計などを精査したわけではないですが、タイはアジアの中でもっともマルチカルチャー、ダイバーシティが進んだ国ではないでしょうか。
歴史を紐解いても、政権の中央に外国人を登用してきましたし、文化的にもそういった傾向を持っているのではないか、と。
タイに身を置くと、「微笑みの国」とも称されるようなしなやかな態度で、外国人を自然に受け入れる環境が、タイという国のDNAのなかに息づいているように感じてしまうのです。
それはおそらく食文化についても同じでしょう。
タイの外国人トップシェフたちと接していても、かつて日本のバブル期などにあったような“助っ人”的な振る舞いを微塵も感じさせません。「あぁ、好きで居着いちゃったんだろうな」という雰囲気に溢れているのが特徴でしょう。
2016-17年にかけて、バンコクがアジアのグルメシティの最前線に躍り出たのは、そう考えれば必然かもしれません。
マルチカルチャーを通り過ぎた後に表される個のセンス。そういったものが現在のグルメシーンのキーワードだとするなら、外国人を自然に包み込むバンコクのポテンシャルの高さは類を見ません。
数年前の政治的な混乱が落ち着いた後、ようやくその存在感を示し始めたと言えるかもしれません。
・店名はタイ語で“季節”。NY仕込みのテクニックで新たなタイ料理を追求
前置きが長くなりましたが、さて、『LE.DU(ル・ドゥ)』です。
バンコク新世代の躍進の象徴のような存在なのですが、実際に店を訪れてみて感じたのは、上に書いたような新世代のダイバーシティ、マルチカルチャー的な創作性でした。
これは、タイ料理なの? いや、フランス料理もかなり入ってるよな? あれれ、やっぱ中華料理か?と、テーブルの上の皿のルーツを考え始めると混乱してしまって、挙げ句の果てには「美味しいから、どうでもいいや」ってなってしまうようなクロスオーバー感が気持ちいいお店と言ってもいいかもしれません。
店があるのは、バンコクの中心街の一つシーロムエリア。
BTSの「Chong Nonsi(チョンノンシー)」駅から徒歩3分。少しだけ小径に入るので、一気に静かな雰囲気になったビルにあります。
中に入ると、レンガ造の内装に、北欧系の座りやすい椅子とテーブルなどシンプルな中に趣のある雰囲気。透かし細工をうまく使った衝立やキャンドルスタンドなど、落ち着いた雰囲気にホッとします。
オーナーは、30代前半のThitid Tassanakajohn(通称トン)シェフ。
彼は、タイの最高学府であるチュラロンコン大学経済学部を卒業後、ニューヨークにある名門料理学校CIA(Culinary Institute of America)に留学。
卒業後はニューヨークのミシュラン三ツ星レストランである『Eleven Madison Park(イレブン・マディソンパーク)』や『Jean Georges(ジャン・ジョルジュ)』などで研鑽を積んでいます。
2013年にタイに帰国し、タイ語で「季節」という意味をもつ『ル・ドゥ』をオープン。
旬折々のタイ食材を用い、NY仕込みのテクニックで新たなタイ料理を追求するスタイルで、じわりじわりと頭角を現し、タイのトップレストランの一つとして知られるようになります。
そして、2017年には「アジアのベストレストラン50」でもNo.37に初ノミネート。
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・トムヤンクン、カオニャオマムアン、カレー……タイ料理を、これまで見たことのない形で再構築
営業はディナーのみで、基本はコース。
おまかせの「6-COURSE TASTING MENU」(2990タイバーツ)とプリフィクスの「4-COURSE」(1690タイバーツ)の2つがメニューに載ります。今回はスタンダードな「4-COURSE」をご紹介します。
まずはアミューズ。
レンゲが中華の雰囲気を醸していますが、タイ古来のおもてなしのおつまみ「マーホー」ですね。本来は生のパイナップルを使うのは、『nahm(ナーム)』で体験済みですが、ここではゼリー仕立てになっていました。
トン・シェフはワインにも精通しているとのことだったので、ドリンクはワインを。
すっきりとした味わいのロゼワインを用意しているところにも好感が持てます。
フレンチやイタリアンのようにくっきりした味の料理が並ぶ場合は、白→赤でいいのですが、日本料理や中華を含めたアジア料理にマルチに対応するのはロゼだというのが持論だったりしますので。
コース1皿目は、「FIRST:Cold Dish/エビのサラダ仕立て」。
タイの食材のフレッシュさを感じながらも、ソースに興味津々。これはタイカレーですかね。
そして、2皿目は、シグネチャーの「SECOND:from the Forest & Sea」からセレクトでシグネチャーの一つ「River Prawn/川エビのグリル」。
20cm超の大きな身のプリプリ感が印象的なのですが、こちらも面白いソース。
最初はとろみが付いていて何かわからなかったのですが、どこがで食べた親しみのある味。そっか、トムヤンクンだ!と気づいてにんまりしてしまいました。
メインの肉料理は、THIRD:From the ranch。「Pork Belly」。
「Pork Belly(豚バラ)」を頼んだのですが、出てきたのは確かに「豚バラ」ではあったのですが、口にして見ると、味はほとんど「トンポーロー」でした。
ただ、付け合わせの香味野菜とのバランス感で、私にはようやく、ここがタイであることを思い出させてくれます。
付け合せの野菜の盛り付けもおしゃれ。
ワインはボルドーの赤で。
そして、4皿目のデザートは「ココナツのアイスクリーム」。
しっとりしたコクが特徴的なのですが、ここでも、そのアイスクリームに下に敷かれたもち米のスイーツに目がいってしまいます。
これは、「カオニャオマムアン」じゃん。タイならどこででも食べられるマンゴーとココナツミルクで炊いたもち米のデザートなのですが、素材や味はそのままだったとしても、かなり形には創作が加わっています。
・「フュージョン」を超えた、新世代のミクスチャー感
ここでシェフが登場したので、「面白かったです」と感想を伝えると、「そう、これはあくまでタイ料理なんです」とニヤリ。
タイ料理を出発点にし、そのプロセスには、コンテンポラリーなフランス料理だったり、時々中華料理だったりの手法も使われ、かたちにしていくと言えば、表面上の説明はつくのかもしれません。
実際、誰かにこの店をざっくり説明する必要があるときは、「フランス料理のかたちをしたタイ料理」と言葉を濁してきました。
そもそも、ある地域の食文化と、他の地域の食文化を融合する「フュージョン」は、今では珍しいものではないかもしれません。
タイ料理でこの分野の先駆者は、『イッサヤ・サイアミーズ・クラブ』だと捉えています。
この『ル・ドゥ』も、もちろんその中の一つでしょう。
『Le Du(ル ドゥ)』店舗情報
営業時間:<月〜土曜>18:00-23:00 定休日:日曜
電話番号:+66 92 919 9969
住所:399/3 Silom soi7 Silom Bangrak Bangkok
オフィシャルHP(英文)を見る
ドレスコードと店の雰囲気
ドレスコードは特にありません。実際、開放感に溢れたお店なので、いわゆる「スマートカジュアル」が無難でしょう。食事の間も含めて、コミュニケーションは英語かタイ語が話せる方なら、まったく問題ないでしょう。日本人客も多いので、ある程度スタッフも慣れているようですが、日本語での細かな対応は難しそうです。
予約の仕方
予約は電話かオフィシャルHPから(タイ語、英語)。
外国語での予約のやり取りが面倒な人は、代行予約サービスを使うのもおすすめです。
店の地図
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