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「アジアのベストレストラン50」の常連、ミシュラン1つ星と名実ともにシンガポールを代表するコンテンポラリーフレンチの『コーナーハウス』。
シンガポール植物園にある歴史的建造物をレストランにし、コンセプトは植物への特別な思いを料理に落とし込んだ「ガストロ・ボタニカ」だと言います。
植物だけではなく、自然が内包する複雑系にまで思いを馳せてしまうほどのその美しく美味しい料理をご紹介。
平均予算:ランチ 10,000~15,000円、ディナー 29,000~30,000円 /「ミシュラン シンガポール 2019」1つ星、「アジアのベストレストラン50 2020」No.43、「La Liste 2020」No.1148
自然に対しての敬意を示した「ガストロ・ボタニカ」
殺人的な暑さの東京を抜け出して、避暑地にでも行きたいところだったのですが、向かったのは、赤道直下のシンガポール。
火に油を注いでいる感じかぁと恐れおののき飛行機に乗ったのですが、降り立ってみると、なんと! 東京より涼しんです。
どうかしているな、地球…と思いながら、地下鉄に乗り、シンガポールの北西部にある植物園を目指します。
そう、最初に予約していたのは、「アジアのベストレストラン50」でも常連、ミシュランも1つ星をキープしている『コーナーハウス』です。
メトロの駅と直結している植物園の正門から歩くと、店まで15分くらいかかるのですが、せっかくなので歩きます(公園脇の道路でタクシーでも行けます)。
『コーナーハウス』のコンセプトは、「ガストロ・ボタニカ」。
つまり、植物への特別な思いをもってつくられる料理だということは予習していましたが、この環境を体験すると、さもありなん、と。
要するに、シンガポールらしくない緑に溢れた自然がありました。
違う言い方をすれば、人工的な金融都市とも言えるシンガポールで、一番贅沢なのは自然かもしれないなんて思いながら、歩を進めます。
意外と距離があるなぁと歩くのに飽きてきたくらいで、到着。
素敵な建物に、退屈していた気分はすっかり忘れます。
なんでもシンガポール政府より歴史的な建造物に指定、保存が義務づけられているコロニアル建築だとか。
ちなみに店名ですが、店の存在を知ったときから英語に「コーナーショップ」的な言い回しがあるのかと思い込んでいたのですが、使われている屋敷が、もともとE J H コーナーさんという植物学者の家だったからでした。
実際に行ってみないと気づかないことは多々あるものです。
・シンガポールの高級店では珍しく週末のランチをやっているのがポイント
結構早めに予約を入れていたからか、窓側の席に。涼しさ満点、眺め最高です。
オーダーしたのは、5 coursesの「MENU EXPERIENCE」($158:約13,500円)。
平日には「3 courses($78++)」や「4 courses($98++)」のビジネスランチメニューが出ていますが、週末のランチメニューはこの「MENU EXPERIENCE」のみ。
伺ったのは、日曜日でしたので。
ちなみに、シンガポールの高級店はたいてい日曜休みなのですが、『コーナーハウス』は開いていました。ありがたいです。
まずは、カクテルで乾杯。
オーセンティックなカクテルも多くありましたが、シグネチャーである「MIDORI(緑)」に。
郷に入れば郷に従えということで、ボタニカルな緑色っていうことで。
メロンのリキュールがベースで、アップルのブランデー、シトラスのジュースがミックスされています。
アミューズとして出てきたのは、仰々しいプレゼンテーションでしたが、とびこが乗ったせんべい。
アジアなテイストですが、美味しいですね。
続いて、アミューズと前菜の間くらいのニュアンスの2皿(食べ終わってから、数えてみたのですが、このあとに5皿出てきますので、ここまではアミューズですね)。
左がフォアグラのムースで、右が梅と紫蘇のゼリーです。
ここまで3品で、塩味、旨味、とろみ、甘み、酸味と結構なジェットコースター状態で、完全に舌が戦闘モードというかガストロノミーモードに変わっています。
そんなところに出てきたのが、ジラードー・オイスター!
西フランスにあるオレロン島でジラードー家が生産している、現地フランスでは結構有名なブランドです。
このあたりは、さすがフレンチ出身のシェフのセレクト。
これだけ高級食材を使っていながら、クレームフレーシュを習慣冷凍したフレークをふんだんに覆い隠していきます。
なかが見えなくなってしまいましたが、牡蠣の身の上にはキャビアが載せられています。
牡蠣とキャビアの相性はどうなんだろ?と思っていたのですが、かすがいとして縁の下の力持ち的な役割を果たしていたのが、身の下に敷かれた酢漬けのきゅうり、ゆず胡椒などのさっぱり系の酸味。
少しバランスが狂えば一気に全てが崩れると言えばいいのか、まるで平均台の上を歩いているような非常にスリリングな味の作り方にドキドキし始めました。
このあと、コースはどんな展開を迎えていくのでしょうか。
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・世界各国から取り寄せた食材の組み合わせの妙
続いて、ロブスターのリゾット。
イカの身も隠し味的にさりげなく混ざっていて、米に混ざりそばの実が入り、西洋ネギ「leek」やエディブルフラワーがまぶされています。
ジュにはシードルも加えられ、爽やかさを追加しているそう。
鮮やかなルックスと裏腹に、かなり複雑な構成で、味が成り立っている逸品。
Patagonian toothfish、和名ではマジェランアイナメ。
ほぼ銀鱈だと思って違わない味で、蒸し物。
そこに、イベリコ豚の頬肉のグリルが加わります。
海と山の融合、淡白なふくよかさと濃厚な旨味の共存とでも言えばいいでしょうか。
平飼いのチキンのグリルが、この日の肉のメイン。
桜えび、枝豆、ライスケーキ、オーストラリア産のサマートリュフのトリュフのソースで味わいます。
口直しなのですが、プレデザートと言ってもいいくらい作り込んでいます。
スイカとスイカのかき氷、パイナップルのソルベ、ライチなど、いろいろ入っているのですが、きちんと口直しの爽やかさで統一されています。
マレー料理で朝ごはんの定番「カヤトースト」のアレンジ(日本語では、再構築?)が、デセール。
料理は結構シンプルに食べ進めてきたのですが、デザートがもっともイノベーティブだというところが、少し面白かったです。
しっかりと小菓子も出てきました。
マカロンの中の煮詰めたマンゴーが濃厚で、やっぱりここは赤道直下だと思い出しました。
・美味しさの根底に潜むのは自然を再現した複雑系?
先ほど、料理はシンプルと書いてしまいましたが、それはあくまでも食べた印象の問題。
各皿を注意深く見れば、かなり変わったことをやっていることに気づきます。
ほとんど海のものと山のものが組み合わせあっていますし、シンプルに味わっていても、かなり複雑な食材の組み合わせをしている料理に溢れていました。
それは、コース構成にも影響してきます。
「アミューズ→前菜(冷菜・温菜)→メイン(魚・肉)→デセール」がフレンチのコースの定形ですが、ここで食べたランチは向かっている流れは一緒なのですが、各パートが既存のかたちのなかに収まらず、前のパートの食い込んでいたり。
クラシックな料理が五線譜で表現できる長調や単調と同じようなものだとしたら、7thや9thなどテンションコードが入ったり、ときに不協和音をうまく取り入れたジャズのような雰囲気。
事前に『コーナーハウス』の料理は「肉や魚と同じように、植物が主役」と聞いていましたが、食べたあとでは、むしろ「肉も魚も植物も、同じように主役」といった印象でした。
偶然、このときのメニューがそうだっただけかもしれませんが、植物ということだけでなく、自然の複雑系をも反映した料理のように感じたのですが、考えすぎですかね。
『Corner House(コーナーハウス)』店舗情報
コース料金:ランチ 148~298(約12,800~24,000円)、ディナー 328 SGD(約27,000円)
営業時間:ランチ<火~土曜> 12:00~L.O. 13:30、 <月~土曜>ディナー 19:00~L.O. 21:00
定休日:日曜
電話番号:+65 6469 1000
住所:1 Cluny Rd, E J H Corner House Singapore Botanic Gardens, Singapore
オフィシャルwebページはこちら
予約に関して
予約は電話か、オフィシャルwebから(英語)。
日本語で予約したい場合は、代行予約が便利です。
店の地図
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