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言葉通りのファーム・トゥ・テーブルな料理と紙管を使った坂茂氏による建築が見事なレストラン。
野菜料理をアップデートするようなスタイルでは、最先端の行くコンテンポラリーフレンチの一つでしょう。
平均予算:ランチ 10,000~15,000円、ディナー 15,000~20,000円/「ミシュラン石川 2021」2つ星、「ゴ・エ・ミヨ 2020」3トック
店の特徴
店名の「Les Tonnelles」とは、「ぶどう棚」が語源の「パーゴラ」のことで、軒先や庭に設置する棚やドーム状に組まれた木製のエクステリアを指しているそう。
果樹園として運営されている「ぶどうの木」の広大な農地から頂ける作物で、料理と客の距離をゼロにしたいというコンセプトです。
・ミシュラン2つ星獲得の新鋭
最近の北陸のガストロノミーの傾向として、地産地消を土台としながら、コンテンポラリー、イノベーティブなアウトプットを特徴とする良質なレストランが増えていますが、その中でも、もっとも注目されている新鋭と言えるでしょう。
2021年5月中旬に発表された「ミシュランガイド 北陸」では、なんと2つ星を獲得。
私自身は、5月上旬に予約して、訪れたのは5月下旬。伺う頃には、おそらく星は獲っているだろうなと想定はしていたのですが、数が全然違いました。
場所は、公共交通機関で行くなら、IRいしかわ鉄道線で金沢から2駅目の森本駅が最寄。
森本駅を出ると、意外や住宅地だなと思っていたのですが、歩いていくに連れ、緑が増えていきます。
その光景に、やっぱ「農園レストラン」ではあるんだと安心したのですが、「ぶどうの木」の入り口に着くと、スタッフの方がわざわざ待っていてくれました。
「これくらいの時間に到着されるかな?と思いまして」とのことでしたが、照れくさいやら嬉しいやら。
・コースのみの展開
メニューは、「¥8,000コース」と「¥15,000コース」の2種がデフォルトで、7日前に予約すれば、「¥12,000 ベジタリアンコース」もあります。
まずは入り口付近のソファーに案内されます。
ウェルカムドリンク
3種のアミューズ
建築家の坂茂さんは、紙管を利用した建築物が代表的なスタイルなのですが、ここ『レ・トネル』でもそれが生かされています。
アミューズの皿は、その建築的なシグナチャーを使って。
アスパラブーケ
ダッシュ豆
「3種のアミューズ」とされていますが、3皿目の牛蒡は空白。
席を移動してカウンターへ。
牛蒡
そこでは、シェフ自らが、ごぼうのスープをサイフォンで抽出していました。
それに加えて、皿の中に置かれていたのは、モッツァレラチーズの素。
牛蒡のスープを入れてもらい、客自らがスプーンでくねくね混ぜて、モッツァレラチーズを完成させます。
へえ、モッツァレラって、こんな風になっているんだ?と再発見。
・魚料理も肉料理も、野菜がメニュー名になる前菜~メイン
テーブルに移動して、さて、本編のスタート。
窓の外に、レストランの建築と連なるように、ぶどう棚が眺められるところに、雰囲気満点。
メニューは、ぶどうの房を雨から守る「傘紙かけ」風に折られています。
庭師 高田ラボ
最初からすごいのが来ました。
野菜を栽培している高田さんから届けられる野菜を、収穫しながら食べるイメージだそう。
生産者の名前がメニューに使われることは増えてきましたが、すぐそこの畑を耕している方というのが面白いなと思います。
パンもペアリング的なテイストも入っていて、高田さんの野菜が練り込まれたもの。
「写真を撮られるなら、野菜をきれいに並べてあげてくださいね」とすすめられて、頑張ってみました。
手前にあるのは、軽く燻製した卵黄とビネガーのジュレ。
卵と酢はマヨネーズの原料、混ぜていくと、自家製マヨネーズっぽいソースになります。
訪れた時期には、石川県にも種類提供の自粛要請が出ていたので、ノンアルコールのペアリングにしたのですが、最初はハーブたっぷり、畑の感覚を生かしたものでした。
ビーツ
旬のビーツを使った一品です。
いくつかの調理法を組み入れ、ソーセージのような食感に仕上がっているのが不思議。
合わせるドリンクは、ノンアルですが、ビールを模したテイスト。
どうしてそんなことになるのか?という仕組みは、実際に行って、ソムリエの方に訊いてみてください。
「へえ」となるはずです。
パンは、ソーセージとビール(のテイスト)に合わせて、シンプルに。
ちょっとドイツっぽい感じと言っておきます。
グリーンピース
グリーンピースというメニュー名から、再び野菜のお皿かと思えば、魚料理とも言えます。
下にはヒラメが控えています。
スナップエンドウ
メニューには載っていない小品で、スナップエンドウの若い実。
これ、市場に出荷されるわけもなく、畑を持っていないと出せない貴重な料理と言えるかもしれません。
アスパラガス
肉料理も野菜名になっていますが、鴨の胸肉のポワレ。
でも、個人的にはアスパラ、さらに茎の下部がヒットです。
上半分は、グリルにして、下半分はフリットにされているのですが、確かに下半分って、食べ飽きたり、味が落ちると感じたりするので、このアイデアは嬉しかったです。
鴨肉に合わせて、ワインっぽく仕上げた、こちらもノンアル。
・デザートもコース仕立て
メインが終わった後、「デザートもコースのような構成になっています」とのアナウンス。
メニューを見ると、8,000円のコースだと2品+小菓子、15,000円のコースだと3品+小菓子とあります。
ブルーベリー
1皿目は、一気に4品。
ブルベリーを4種のスタイルで、デザートコースのアミューズ的な立ち位置。
合わせるのは、薔薇を抽出したノンアル・ドリンク。
モッツァレラ
ミツバチのかたちにインスピレーションを受けたメインのデセール。
小菓子
コーヒー、ハーブティー、紅茶、エスプレッソから選べる食後のドリンク。
それとともに金沢らしさも感じる小菓子が付いてきます。
・シェフは野菜使いの新旗手
それしても、野菜だけでも、ノンアルだけでも、ここまでの味を出せるのかと感心しきりです。
とくにビーツのソーセージは、何かを「模す」ことがコンセプトではないかもしれませんが、上海のクリエイティブ精進料理の名店『福和慧(フヘフイ)』 で食べた、上海伝統の精進料理の一分野「もどき料理の最新型」を思い出します。
まさか、金沢で上海に行きたい!と思い出すとは。
そんな個人的な話は別として、これだけ野菜に対してのボキャブラリーがあるのは、すごいなと思っていたら、
シェフの砂山利治さんは、ジュネーブの1つ星『Le Buffet de la Garedes Eaux-Vives』、フランス・モントルイユ=シュル=メールの2つ星『La Grenouillère』、その後、フランス・ムジェーヴの3つ星『Flocons de sel』など、野菜の使い方には一癖も二癖も名店で研鑽を積んでいた方だそう。
店の外には、ぶどう畑だけでなく、水田や野菜畑が広がる環境には、わが意を得たりという感覚だったのかもしれません。
新しい感覚での野菜の使い手としては、今後、全国的にも頭角を現してきそうなクオリティだったのは、たしか。
そう考えると、ベジタリアンの方じゃなくても、「ベジタリアンコース」を食べてみるのも面白いかも。
メニュー
【ランチ/ディナーとも】
「¥8,000コース」※税・サービス料込
アミューズ3品、オードブル2品、お魚料理、お肉料理、デザート2品、小菓子
「¥15,000コース」※税・サービス料込
アミューズ3品、オードブル3品、お魚料理、お肉料理、デザート3品、小菓子
「¥12,000 ベジタリアンコース」※税・サービス料込/7日以上前の電話予約でのみ受付可
アミューズ、デザートを含む13~15品のコース
*メニュー・料金はあくまで参考になります。季節や食材の入荷状況によって変わることを前提にご覧ください。
予約方法
電話かwebから。 web即時予約は、オフィシャルwebで受け付けています。
オフィシャルwebから予約する
店の地図・アクセス
「森本駅」から徒歩10分。
『レ・トネル ぶどうの木』店舗情報
平均予算:ランチ 10,000-15,000円、ディナー 15,000-20,000円
営業時間:完全予約制 ランチ 11:30-12:30、ディナー 18:00-19:30
定休日:不定休
電話番号:076-258-0204
住所:石川県金沢市岩出町ハ50-1 ぶどうの木本店敷地内
オフィシャルHPはこちら 食べログの情報を見る
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