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バンコク以外のレストランも対象になった2019年度のタイ版ミシュランで、プーケットから唯一1つ星を獲得し、注目を浴びる『PRU(プル)』。
6つ星リゾート「トリサラ」のメインダイニングにして、アジアの「地方ガストロノミー」の未来を担う逸材です。
平均予算:ディナー 20,000~30,000円/「ミシュラン プーケット 2021」1つ星
プーケット初のミシュラン1つ星店は、オーガニックでイノベーティブ
プーケット島の北西部、島きってのラグジュアリー・リゾートと名高い「トリサラ」のレストランが、この『PRU』です。
コンセプトは「ファーム・トゥ・テーブル」。今では目新しいスタンスではないかもしれませんが、その徹底ぶりは特筆すべきでしょう。
なにしろ、店名から「Plant(植えて)、Raise(育てて)、Understand(理解する)」という言葉の略だと言います。
自家農園をつくり、有機野菜やエディブルフラワー、ハーブなどの野菜だけではなく、キノコや放し飼いの鶏まで育てているそう。
自家菜園の食材などを中心に、ほぼ地元産の食材でつくられるイノベーティブなコースが真骨頂と言えるでしょう。
・日常から隔離された抜群の環境
この「PRU」がある「トリサラ」は、プーケット島北西部にあります。
プーケットタウンやパトンビーチなどのプーケット観光の代表的なエリアとは完全に趣を異にし、岬にはさまれた静寂な入り江に佇んでいます。
プーケット空港からは、車で約20分の距離。
タクシーで行くと、まずはホテルのエントランスへ。
ヴィラタイプのみのリゾートなので、そこからはスタッフがカートでレストランまで送ってくれます。
ちなみに、『PRU』のほかに「トリサラ」には、もう一つビーチに面した『シーフード・アット・トリサラ』というダイニングがあります。
こちらは、ママの味を活かしたタイの家庭料理をソフィスティケートされたタイプで、『PRU』と同じく、2019年度のタイ版ミシュランで「ミシュラン・プレート」を獲得。
機会があったら、食べ比べてみたいものです。
・2種のコースに集約された『PRU』のメニュー
『PRU』のメニューは、基本的に2タイプのコースです。
「8 Courses Seasonally Inspired」が5,500タイバーツ(約20,000円)、「6 Courses Seasonally Inspired」が4,500タイバーツ(約16,000円)。
それぞれメインの肉料理でオプションの「wagyu」を付け加えることが可能です。
ペアリングのワインコースもあって、通常が3,500タイバーツ~、プレミアムが7,000タイバーツから。
タイではワインは飲まないので、シグネチャーカクテルの一つ「マルベリー」で乾杯。
コースは、「6 Courses」に「Wagyu Beef」を付けてみることにします。
早速出てきたアミューズから世界観が炸裂しています。
「ビーツにキャビア」「ポテトに豆」「ゴボウ」など。
パンだけでなく、バターも凝っています。
無添加バターに、ゴマ入り、そしてブラックオリーブオイル。
これだけずっと食べていたい欲望に囚われますが、まだまだ序盤戦です。
・旬の食材を活かした前菜3部作
続く、前菜は勝手に汁物3部作と名付けさせてもらいました。
ほぼトマト。何種類使われているかはわかりませんが、散っている赤いフレークもトマト、ソルベもトマトのグルタミン酸からつくられたものです。
緑のガスパチョはキュウリとトマトのミックス。
「Found in the Mangroves in Phang Nga(パンガー地方のマングローブで見つけたもの)」
「Black Crab, Phuket Coffee」。
日本名ではノコギリ ガザミ。ココナッツで覆い、プーケットコーヒーをソースに。
そのなかに潜んでいる、かに味噌の濃厚さといったら!
初めて食べましたが、ワタリガニ系の甲殻類で日本では珍味とされるブラッククラブ、すごい食材だと思います。
「Salted egg from Chai Ya(チャイヤー地方から燻製卵)」
「pickled and served with Phuket Abalone」。
ピクルスと燻製卵、そしてメインはプーケット産のアワビ。
汁物3部作とか言いましたが、ソースではなくジュで食べる感覚ですね。
食材から採れる出汁なども活かしきりたいという意図がくっきり浮かび上がっています。
外国語での予約が面倒な方は、代行予約も便利です。
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・ファーム・トゥ・テーブルの真髄を体験
後半戦のカクテルは、「Cucumber(キューカンバー)」。
キュウリですね。身体を冷やしてくれますし、口もさっぱりしますし。
そして、シグネチャーディッシュだと出されたのがこちら。
「Carrot cocked in the soil they came from(育った土で調理されたニンジン)」
一瞬、何だかわからなかったのですが、ニンジンだそうで、6時間以上低温で火入れしているとか。
正直、派手さがないなという第一印象だったのですが、それは口に入れた途端、とろけていきました。
なんでしょう、この甘味は!
『レフェルヴェソンス』のスペシャリテ「定点観測」、つまりカブに匹敵するレベルの野菜を食べたのは、これがはじめてと言ってもいいかもしれません。
「Caught in the Rivers in Surat Thani(スラーターニー地方の河で捕まえて)」
「River Prawn and XO sauce」。川エビというか川ロブスターを、特製XO醤で。
このXO醤がイカスミっぽい濃厚さが出ていて、海老の軽やかさとマッチしています。
前菜のところでソースよりジュと書きましたが、メインでは、きちっとしたソースに移っていって、印象強さを醸しています。
「Roaming the Mountain in Petchhabun(ペッチャブーン地方の山を歩きまわって)」
「Aged Duck and Shiitake」。
これまで、タイ南部、マレー半島付け根の地域の食材でしたが、肉はタイ北部から。
程よい熟成感を醸し出したダックです。鉄板。
付け合せはシイタケをメインにして美しいオブジェ。
「Wagyu Beef from Nakon Phanom(ナコン・パノム地方産の和牛)」
この店で、和牛ってどんな感じだろ?という興味だけで頼んだオプションの和牛(別料金)。
これも、タイ国産でした。徹底しています。ナコン・パノムはラオス国境近くの東北部の地域。
そもそもタイ産の和牛は霜がきつすぎないので、個人的には好みなのですが、最高級のものはこんなにレベルが高くなっているんだという驚きもありました。
「With the latest harvest from our farm」と副題が付いているように、付け合せは季節や日によって変わるよう。
デザートも3部作。
レモンのグラニテで、口を直し。
ジンジャーのアイスクリームで、頬を落とし。
プーケット産のパイナップルなど地元産の食材も織り込まれた小菓子で締めます。
・コースのまとめ
メインの肉に関しては北部の食材も使っていましたが、南部の海鮮を使い、野菜はほぼ自家農園。
地産地消の新たなかたちでもある「ファーム・トゥ・テーブル」のコンセプトを、これだけ実践しているハイエンドなレストランは稀有だと思います。
そう考えると、ワインではなく、カクテルにしたのも正解だったかも、と。
今回頼んだ「マルベリー」と「キュウリ」のほかにも、タイのお茶を使った「Cha-Thai」や、「Carrott & Ginger」がシグネチャーカクテルとしてラインナップされています。
どれもオーガニックでナチュラル。自家菜園でビオダイナミック農法をつかって採れる野菜や果物をメインにしたものばかり。
・弱冠29歳のシェフにも注目
この『PRU』を率いるシェフは、1990年にオランダで生まれたジム・オフォーストさん。
『GAGGAN(ガガン)』で働いたいた26歳のときに、この店のシェフに抜擢されたとか。
なるほど、現代的なプレゼンテーションや革新的なアイデアをベースにしていることは伺えます。
そこを出発点に、分子料理ではなく、オーガニックでエコロジカルな表現を追求するスタンスは、同じくガガンの愛弟子『GAA』などにも共通する感覚とも言えるかもしれません。
・アジアの地方ガストロノミーの未来を担う存在か
アジアの都市のレストランのレベルが上がってきていることは言うまでもありませんが、地方都市は、まだまだ発展途上と言っていいでしょう。
台湾・屏東の『AKAME(アカメ)』のように、突然変異的に名店が生まれることはあるかもしれませんが、エリアとしてクリエイティビティでも国際的に勝負ができるのは、『Locavore(ロカヴォール)』や『Cuca Restaurant(クカ・レストラン)』を擁するバリ島くらいだったでしょう。
そこに、この『PRU』が注目を浴びることによって、タイのプーケットも浮上していくのなら、これからますますアジアの地方が面白くなっていく起爆剤になるような気がしています。
例えば、個人的に興味を惹かれているのが、「食材調達とクッキングの旅」と称される宿泊パッケージ。
クルーズで釣りやシュノーケリングをし、獲った魚はシェフが船上でさばいてタイ料理に。
翌日は、プーケットタウンへシェフとともに向かい、地元の食材を入手。地元の方の手ほどきを受けながら、伝統的なタイ料理を学びます。
夜にはヴィラでシーフードバーベキュー。
最終日は、自家農園でハーブを摘み、卵を収穫。ディナーはシェフのジム・オフォーストのクリエーティブなコース料理を堪能して締め。
これほど個性的な食体験は、都市ではなかなか体験しづらいことですので。
『PRU(プル)』店舗情報
営業時間:18:00 – 22:30
電話番号:+66 (0)76 310 100
住所:60/1 Moo 6, Srisoonthorn Road, Cherngtalay, Thalang, Phuket
オフィシャルwebはこちら
予約に関して
上記のオフィシャルHPから予約できます。
また日本語で予約したい場合は、代行予約も可能です。
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店の地図
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